
⭐️⭐️⭐️⭐️
The Vines
“Highly Evolved” (2002)
2000年代の「ガレージ・ロック・リヴァイヴァル」をの中心的バンドとして、この時期のザ・ハイヴス、ザ・ホワイト・ストライプス、ザ・ストロークスのアルバムを【名盤500】に選んできたけれども、4つ目に挙げたいのがこのザ・ヴァインズの1stアルバムだ。
面白いのは、上に挙げた4つのバンドはすべて名前に「ザ・」が付いているのだ。
90年代はこの「ザ・」を付けるバンドが少なくなった時代だった。ニルヴァーナ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、オアシス、レディオヘッド、プライマル・スクリーム、ウィーザー、ナイン・インチ・ネイルズ、グリーン・デイなどなど。
その理由にはたぶん、バンド名に「ザ・」を付けるなんて、ビートルズやストーンズやフーじゃあるまいしと、ちょっと大袈裟な、時代錯誤な感じだったのだと思われる。
でもこの2000年代のバンドたちはやっぱり目指すものが原点回帰だからなのか、60年代風に、あえて「ザ・」を付けて、「だって、俺たちはロックンロール・バンドだぜ!」と胸を張ってる感じがするのだ。
まるで、後継者不足に悩む伝統産業に興味を示す若者たちが、後継を志願して世界中から集まってきている、みたいなローカル・ニュースを聞いたみたいな気分だった。実に嬉しい。
ザ・ヴァインズは、2001年にデビューした、オーストラリアのスリー・ピース・バンドだ。
シドニーで17歳のクレイグ・ニコルズ (Vo,G)とパトリック・マシューズ (B)がアルバイト先のマクドナルドで出会い、後にマシューズの学友のデヴィッド・オリフがドラマーとして加入する。
本作は2002年7月にザ・ヴァインズの1stアルバムとして、ハリウッドのスタジオで録音され、キャピトル・レコードからリリースされた。
【オリジナルCD収録曲】
1 ハイリー・イヴォルヴド
2 オータム・シェイド
3 アウタザウェイ!
4 サンシャイニン
5 ホームシック
6 ゲット・フリー
7 カントリー・ヤード
8 ファクトリー
9 ジャングル
10 メアリー・ジェーン
11 エイント・ノー・ルーム
12 1969
本作は全米11位、全英3位、本国オーストラリアでも5位と、世界で200万枚以上を売り上げるヒットを記録した。また、NME誌の年間ベスト・アルバムで2位に選出されるなど高い評価を得た。
フロントマンのクレイグ・ニコルズが全曲を書いているが、幼少期からビートルズを聴いて育ち、思春期にニルヴァーナに衝撃を受けたというだけあって、まさにそのふたつが融合したようなアルバムになっている。もうひとつ言えば、彼の父親はエルヴィス・プレスリーのコピー・バンドをやっており、そのバンド名がザ・ヴァインズだったという。
発狂したようなグランジ・ロックがあるかと思えば、美しく甘いメロディの60年代サイケデリック・ポップスもあったりするその振幅の激しさが魅力であり、奇跡的なバランスで同居している。
本作についてクレイグ・ニコルズは次のように語っている。
「俺はただ、自分の頭の中にある音を吐き出したかっただけなんだ。ニルヴァーナを聴いたとき、世界が変わった。俺たちもそういう、聴いた瞬間にアドレナリンが噴き出すような音楽を作りたかったんだ。スタジオにいるときは、まるでトランス状態のようだったよ」(Rolling Stone誌インタビューより)
クレイグは発達障害の一種であるアスペルガー症候群を患っている。
観客に対する暴言やカメラマンに対する暴行、数々の奇行など、問題行動や体調不良で何度もツアーを中止している。そんな状況に嫌気がさして、バンドのメンバーも次々に辞めていった。とくに2004年の日本公演ではステージで暴言を繰り返し、散々な結果に終わったという。メンバーも「あの日本公演はどん底だった」と述懐しているほどだ。
MVで歌う姿を見ても、なんだか危なっかしいことこの上ない雰囲気だけれども、それでも現在までに8枚のアルバムを出し、クレイグ以外のメンバーは入れ変わりながらも、バンドは存続している。
↓ 初期の代表曲「ゲット・フリー」。米オルタナチャートの7位まで上昇した。
↓ 米オルタナチャート14位まで上昇した「アウタザウェイ!」。
(Goro)