再び世界最高のロックバンドへ 〜U2『オール・ザット・キャント・リーヴ・ビハインド』(2000)【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#384

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【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#384
U2
“All That You Can’t Leave Behind” (2000)

「地元ではクソ真面目だった奴が、商売が上手くいったのか、90年代に入った頃になんか急に派手な格好して、ネオンが輝く都会の歓楽街で遊び出したんだ。でも時代の流れで、商売が右肩下がりになってきたのもあって、ここらでもう一度初心に戻って、しっかり地に足をつけようって考えたのか、10年ぶりに奴は地元に帰ってきた。根は真面目なやつだから、昔と変わらず良い奴だけど、さすがに人生経験はたっぷり積んできた感じはするな」

本作を擬人化して言い表すと、まあそんな感じだ。

1991年の『アクトン・ベイビー』以来、最新技術を駆使した過激なポップ・エンターテインメント路線を追求してきたU2だったけれども、本作ではギター、ベース、ドラムを中心とした初期のサウンドに回帰している。

前作『Pop』では、エレクトロニカやダンス・ミュージック、サンプリングを大胆に取り入れた実験的なサウンドだったけれども、アルバムもそのツアーも、商業的にも批評的にも思わしくなかったこともあって、本作ではストレートなロックへの原点回帰を決意したようだ。

本作についてボノは、「『世界最高のバンド』という仕事に、もう一度書類を出して面接を受けている気分だ」と語っている。上手いことを言う(笑)

その面接は見事に合格し、2000年10月にリリースされた本作は、世界32カ国でチャート1位を獲得し、10年ぶりに1千万枚を超す、1,200万枚以上を売り上げ、21世紀に向けて再びロック・シーンの第一線に戻る転換点となった。カッコ内はシングルチャート最高位。

【オリジナルCD収録曲】

1 ビューティフル・デイ(英1位、米21位)
2 スタック・イン・ア・モーメント(英2位)
3 エレヴェイション(英3位)
4 ウォーク・オン(英5位)
5 カイト
6 イン・ア・リトル・ワイル
7 ワイルド・ハニー
8 ピース・オン・アース
9 ホエン・アイ・ルック・アット・ザ・ワールド
10 ニューヨーク
11 グレイス
12 ザ・グラウンド・ビニース・ハー・フィート

プロデューサーは、U2の代表作である『ヨシュア・トゥリー』『アクトン・ベイビー』を手がけたダニエル・ラノワとブライアン・イーノの最強コンビに再び依頼している。そのことからも、U2が一度原点に還ろうと考えていたことがよくわかる。

原点回帰とはいえ、しかし単なる80年代の焼き直しではなく、90年代に培ったモダンな音響表現とエンターテインメント性はうっすらと残しつつ、明るく親しみやすいメロディと融合させて、贅肉を削ぎ落とした、洗練されたポップ・ロックへと進化させている。

↓ U2の代表曲に加わることになった「ビューティフル・デイ」。この曲をレコーディングするにあたり、ギタリストのジ・エッジが初期のアルバム『闘 (War)』を彷彿とさせる、あのお馴染みの煌めくギター・トーンを弾いた際、他のメンバーは「もっと未来的なサウンドにすべきだ」と反発し、大論争になったという。しかしエッジは「楽曲のアレンジが十分に斬新なのだから、あえて自分のルーツであるサウンドに戻るんだ」と主張して押し通したという。結果的にはこれが世界的大ヒットに繋がった。

↓ アンジェリーナ・ジョリー主演の映画『トゥームレイダー』の主題歌にも使用されて大ヒットした「エレヴェイション」。シングルのバージョンはアレンジが大幅に違い、ナイン・インチ・ネイルズのクリス・ヴレンナがリミックスして、よりハードなサウンドへと変化している。

(Goro)