傷だらけの歌姫のリアル・ソウル 〜エイミー・ワインハウス『バック・トゥ・ブラック』(2006)【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#419

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⭐️⭐️⭐️
【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#419
Amy Winehouse
“Back To Black” (2006)

60〜70年代のR&Bやソウル・ミュージックが大好きなわたしにとって、90年代以降に「R&B」と称されてもてはやされた音楽はわたしの知っている「R&B」とはまったく違うシロモノだった。バンド不在の、機械音だけの味も素っ気もない目覚ましアラームのような代物、いったい何がどうなってこんなことになってしまったんだと悲嘆に暮れたものだった。

だから本作を聴いたときは嬉しく思ったものだ。生々しい人間の声と、人間が演奏している温かみと意志のあるサウンドと、血の通ったグルーヴ。これこれ!とわたしは喜んだものだ。

21世紀に突然出現した太古の恐竜の生き残りのような本作は、全英1位、全米2位、全世界で1,600万枚を売り上げる大ヒットとなり、グラミー賞でも5部門を獲得した。まるで、ゴジラがメカゴジラをやっつけたぐらいに痛快だったものだ。

エイミー・ワインハウスはイギリスのミドルセックス州出身で、20歳でデビューした。本作は彼女が23歳となった2006年にリリースした2ndアルバムである。

【オリジナルCD収録曲】

1 リハブ
2 ユー・ノウ・アイム・ノー・グッド
3 ミー&ミスター・ジョーンズ
4 ジャスト・フレンズ
5 バック・トゥ・ブラック
6 ラヴ・イズ・ア・ルージング・ゲーム
7 ティアーズ・ドライ・オン・ゼア・オウン
8 ウェイク・アップ・アローン
9 サム・アンホーリー・ウォー
10 ヒー・キャン・オンリー・ホールド・ハー

60年代のモータウンなどのガールズ・ポップやソウルなどを色濃く反映した楽曲に、エイミーのハスキーでソウルフルなヴォーカル、ヴィンテージ感のあるホーンやストリングスが絡み、まさにわたしの思うホンモノのR&Bが復活している。デジタル機器のオートチューンでピッチを修正することもエイミーは嫌い、ピッチ補正なしの生々しい歌声を聴かせてくれる。

歌詞の内容は交際相手との壮絶な破局、アルコール依存、そして孤独と自己破壊というリアルな痛みに満ちたものだ。

本作の世界的ヒットで一躍時の人となったが、ジャズを愛した彼女はしかし、5万人の前で歌うことを夢見たわけではなかった。

この翌年にビデオの撮影アシスタントと結婚すると、その夫の影響でエイミーは薬物依存症となり、ノルウェーで大麻所持で逮捕された。

保釈金を払って釈放されたものの、夫の司法妨害に加担した罪とやらで再逮捕され、薬物の治療施設に入所した。

2008年4月には、酔って男性2人を暴行して警察の事情聴取を受け、5月には薬物所持で再び逮捕された。

女性関係にルーズだった彼女の夫は逮捕拘留中にも女囚と浮気し、エイミーは逆に捨てられる形で離婚され、アルコール中毒と薬物依存がさらに深刻になる。

スキャンダラスなトラブルメーカーが大好物のパパラッチに追い回される喧騒のような日々にも精神をすり減らしていった。病的に痩せたエイミーが錯乱状態で泣いている写真をパパラッチに撮られ、世界に衝撃を与えたこともあった。

2011年にヨーロッパ・ツアーを開始したものの、復活のステージとなるはずだったセルビアのフェスの開始時間に大幅に遅れたうえに泥酔してまともに歌えず、大観衆からブーイングを浴びせられる事態となった。翌日には「史上最悪のコンサート」などと報じられ、ツアーは中止となった。

そしてその翌月の2011年7月、彼女は自宅で遺体となって発見された。

死因はアルコール中毒で、寝室の床の上にはウオツカの空き瓶が2本転がっていたという。
27歳だった。

カート・コバーンの母上が嘆いた「愚か者クラブ27club」に、また一人新たな名前が書き加えられてしまった。

↓ プロデューサーのマーク・ロンソンにエイミーが「マネージャーが私を依存症のリハビリに行かせようとしたの。でも私は『No, no, no』って答えたわ」と話すと、ロンソンが「今のフレーズ最高だから曲にしよう!」と提案したことで生まれたという、全英7位、全米9位となった代表曲「リハブ」。

↓ アルバムからの3rdシングル「バック・トゥ・ブラック」。こちらも全英8位、全米8位の大ヒットとなった。当時の交際相手が元カノのところへ戻っていったことがきっかけで作られた。

(Goro)