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【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#392
Wilco
“Yankee Hotel Foxtrot” (2002)
ルーツ・ミュージックへの深い愛と共に、大いなる実験精神を抱いて航海を続けたウィルコが、潮流に逆らい、怒濤万丈の大洋を乗り越えてついにたどり着いた、前人未到の地のような作品だ。
「オルタナ・カントリー」と形容された初期のウィルコから、アルバムを発表するたびにその音楽性は大きく変容し、芯にはカントリーやフォークといったルーツ・ミュージックの核を残しつつも、音響的な実験やポップへの接近など、大胆な逸脱を繰り返した。
そして4作目となる本作ではジム・オルークをプロデューサーに迎え、アコースティックな音色や親しみやすいメロディといった彼らの特徴と強みは残しつつ、テープループ、環境ノイズ、電子音、不協和音を大胆にミックスし、唯一無二の、アメリカン・ロックの伝統とアヴァンギャルドな実験精神が奇跡的なバランスで融合した「アート・ロックの金字塔」が誕生したのだ。
【オリジナルCD収録曲】
1 アイ・アム・トライング・トゥ・ブレイク・ユア・ハート
2 カメラ
3 レディオ・キュアー
4 ウォー・オン・ウォー
5 ジーザス、エトセトラ
6 アメリカ国旗の灰
7 ヘヴィ・メタル・ドラマー
8 アイム・ザ・マン・フー・ラヴズ・ユー
9 ポット・ケトル・ブラック
10 プア・プレイシズ
11 リザベーションズ
しかしこの前人未到の音楽は、当時彼らが所属していたワーナー傘下のデヴィッド・カーン社長にはどうやら全く理解できなかったらしい。彼は本作を聴いて「商業的な価値がない」「非現実的すぎる」とのたまい、リリースを拒絶し、作り直しを要求した。
バンドはそれを拒否したため、レーベルを解雇されることになった。
しかしバンド側は、アルバムの権利だけは買い取り、2001年9月、自分たちのウェブサイトでアルバムを全曲無料でストリーミング配信するという、当時としては前代未聞の行動に出た。そしてこれがネット上で爆発的な話題を呼び、凄まじい口コミとなって広がったのだ。
ネットでの熱狂を見たレーベル「ノンサッチ」は、すぐさまバンドと契約を結び、2002年4月に正式にCDをリリースした。
アルバムは批評家から絶賛され、セールスも全米13位まで上昇し、バンド史上最大のヒット作となった。
皮肉にもウィルコを拾った「ノンサッチ」もまたワーナー傘下のレーベルであった。つまりワーナーは、「社長自らがその芸術的価値も商業的成功も見抜けず、一度クビにしてタダ同然で手放した音源を、自社の別レーベルが大金を払って買い直す」というなんとも間抜けな失態を演じたわけだった。
↓ ウィルコの代表曲のひとつとして知られる名曲「ジーザス、エトセトラ」。もともとは「Jesus Don’t Cry」というタイトルだったが、レコーディング中に省略して「Jesus, Etc.」と書いていたものがそのまま定着したという。
↓ 本作からのリード・シングルとなった「ヘヴィ・メタル・ドラマー」。米オルタナチャート24位と、ヒットには至らなかったが、批評家からもファンからも愛されている名曲である。
(Goro)

