Arcade Fire
“Neon Bible” (2007)
デビュー・アルバムが絶賛され、世界的な注目を集め、商業的にも成功した、などというバンドの2ndアルバムほど、産みの苦しみを味わい、厳しい評価の目に晒されるものだろう。まるで、東大法学部を現役で合格した長男に続いて、その成績と進路に注目が集まる次男のようなものである。
そして最悪の場合、産みの苦しみを長引かせているうちに世間に忘れられてしまうか、1stと同程度のクオリティのものをなんとか産み落としたのに不当にも「1stから進歩していない」などと不合格の烙印を押され、その後も1stばかりが歴史的名盤として崇め奉られるのである。
このアーケイド・ファイアもまた、1stアルバムが絶賛され、歴史的名盤として評価が定まったバンドだった。
しかしそれから3年、2007年3月にリリースされた本作は、またしても絶賛され、前作を上回るほどの高い評価を得た、稀有の2ndアルバムとなった。わたしも本当に驚いた。あまりにも素晴らしすぎたからである。
【オリジナルCD収録曲】
1 ブラック・ミラー
2 キープ・ザ・カー・ランニング
3 ネオン・バイブル
4 インターベンション
5 ブラック・ウェーヴ/バッド・ヴァイブレーションズ
6 オーシャン・オブ・ノイズ
7 ザ・ウェル・アンド・ザ・ライトハウス
8 (アンチクライスト・テレビジョン・ブルース)
9 ウィンドウシル
10 ノー・カーズ・ゴー
11 マイ・ボディ・イズ・ア・ケイジ
壮麗でクラシカルな、スケールの大きなサウンドに乗せて歌われているのは、9.11以降の米国の恐怖政治や監視社会、狂信的な宗教観や、過熱するメディアの狂騒ぶりに対する声明である。
前作の成功で得た資金を使って、バンドはカナダのケベック州にある、元は教会だった建物を購入し、自分たちのスタジオとして改造し、レコーディングを行ったという。
教会のパイプオルガン、ブダペストのオーケストラや軍の合唱団、アコーディオン、手回しオルガンなど、多彩な楽器や声が使用され、前作で評された「バロック・ポップ」の特徴をさらに強めている。
ダークでディストピア的な世界観でありながら、真摯で誠実に世界に対して歌いかけるその音楽には、心から感動し、畏敬を感じるほどだった。
アルバムは本国カナダで1位、さらには全米2位、全英2位など、前作を上回る世界的ヒットとなった。
↓ アルバムの開幕を告げる、ダークでディストピア的な「ブラック・ミラー」。
↓ モントリオールの教会に設置されている本物の巨大パイプオルガンが炸裂する「インターベンション」。戦争と信仰の失墜をテーマにした、本作のハイライトだ。わたしもこれがいちばん好きだ。
(Goro)
