1968年にデビューしたC.C.R.(クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル)の音楽は、ロックンロールという音楽がそもそも、黒人のブルースと白人のカントリーを融合させて生まれた、アメリカの風土が育んだ音楽であることをあらためて思い出させてくれる。
アメリカの大地のそこかしこに転がっている「ロックの原石」を、そのまま拾い上げ、職人技で磨き上げただけのような、シンプルでありながら味わい深い魅力を放つ輝きは、当時世界を席巻していた英国のロックとはひと味もふた味も違う、真にアメリカらしいロックであり、ロックの原点のようでもあった。
60年代末、ビートルズが解散し、新たにハード・ロックやプログレッシブ・ロックが台頭してきた時代に、C.C.R.のロックの原点に還るような方向性は真逆と言えたが、リスナーの圧倒的な支持を得て、シングル・ヒットを連発した。
これ以上はないほどシンプルな曲なのに、一生聴き続けても飽きない。
C.C.R.の中心人物、ジョン・フォガティはそんな曲を書く天才だ。
この少ししゃがれた粘っこい独特の声がまたいい。
シンプルな曲が、この表情豊かな声によって陰影や哀愁を帯び、感情を揺さぶり、聴きごたえのあるものになる。まさにロックを歌うために生まれてきたような男だ。
C.C.R.の活動期間はわずか4年だったが、そのあいだに7枚のアルバムを残した。彼らもまた時代を全速力で駆け抜けたロック・バンドだった。
そんなC.C.R.の、わたしが愛する名曲ベストテンを以下に選んでみました。
Proud Mary(1969)
ブルース・ロックを基調とした2ndアルバム『バイヨー・カントリー』の中で、1曲だけテイストが違う、超シンプルなカントリー風の曲だ。それがシングル・カットされて、全米2位というC.C.R.にとって初の大ヒットとなった。
それまで無名だった彼らが、急にアメリカのどこへ行っても「プラウド・メアリーを歌ってる歌手だろ?」と声をかけられるようになった、とジョン・フォガティは後年語っている。
Bad Moon Rising(1969)
「プラウド・メアリー」の大ヒットで気をよくしたのか、3rdアルバム『グリーン・リヴァー』以降、さらにカントリー・ロック調の楽曲が増えていく。この路線変更は成功し、この曲も全米2位、そしてイギリスでは初の1位となる大ヒットとなった。
軽快な曲調だが、歌詞は「悪い月が昇ってる。終末は近い。死ぬ用意はできてるか?」と、不安を煽るような歌詞だ。ブラック・ユーモア的なことなのか?
Lookin’ Out My Back Door(1970)
5枚目のアルバム『コスモズ・ファクトリー』からのシングルで、全米2位の大ヒットとなった。C.C.R.は全米2位のシングルが5枚もあるのに、全米1位は一度も獲ったことがないという悲運のバンドでもあった。しかしこの曲も、カナダ、オーストラリア、オーストリア、ノルウェーでは1位を獲得している。
「バック・オーウェンズのレコードを聴く」などという歌詞も出てくる、コッテコテのカントリー・ロックだ。
Down on the Corner(1969)
絶好調だった1969年のC.C.R.は、この年だけで3枚目のアルバム『ウィリー・アンド・ザ・プアボーイズ』を発表する。路上で演奏する貧乏バンドに扮したコンセプト・アルバムである。その冒頭を飾るのがこの曲だ。全米3位の大ヒットとなった。
この曲もまたシンプルを極めるメロディなのに、なぜか魅力的である。音楽なんて結局、鼻歌で歌いたくなる歌がいちばんなんじゃないか、といつも思うことをやっぱり思ってしまう。
Up Around the Bend(1970)
1970年に発表された5thアルバム『コスモズ・ファクトリー』は全米1位となり、現在もC.C.R.の代表作として知られる名盤だ。この曲もそのアルバムからのシングルで、全米4位の大ヒットとなった。
エレキギターのイントロがカッコいい、エネルギッシュでテンションの上がるロックンロールだ。ハノイ・ロックスが1984年にカバーして人気を博したせいか、日本でもよく知られている曲だ。
Run Through The Jungle(1970)
『コスモズ・ファクトリー』収録曲で、シングル「アップ・アラウンド・ザ・ベンド」のB面にもなった曲。C.C.R.はカントリー・ロックだけでなくブルース・ロックも多く演奏したが、この曲はオリジナル曲の中でも最もカッコいいブルース・ナンバーだと思う。
不穏なグルーヴと、ジョン・フォガティのクールなヴォーカルにシビれる。ベトナム戦争を想起させる、異国の地のジャングルを進んでいくような曲だ。
Lodi(1969)
「ローダイ」はカリフォルニアの地名で、お客が入らない辺鄙な場所でライヴをしなければならないバンドの苦労を歌った歌だ。3rdアルバム『グリーン・リヴァー』に収録され、「バッド・ムーン・ライジング」のシングルのB面にも収録された。
コード進行もメロディもアレンジもシンプル極まりなく、特別なことを何ひとつしていないのに、なぜかグッとくる不思議な曲だ。
Fortunate Son(1969)
タイトルは「幸運な息子」という意味だ。
時代はベトナム戦争の真っただ中、億万長者や政治家の息子に生まれたために戦地に送られずに済んだ「幸運な息子」と、その代わりとして徴兵される自分たちの運命に対しての憤りを歌った歌だ。C.C.R.にしては歌詞もサウンドもかなりハードなプロテスト・ソングとなっている。
Who’ll Stop The Rain(1970)
この無駄のない、短くてシンプルなメロディ、なのに情感の豊かなこと。何度聴いても感心する。単純な美しさに感動を覚えるのである。もしかすると侘び寂びみたいなものがわたしにもわかってきたのかもしれない。
変わりゆく世を憂う、そんな歌だ。
いかにもジョン・フォガティらしいが、そういう歌はいつの時代でも共感を得るに違いない。
Have You Ever Seen The Rain(1970)
6thアルバム『ペンデュラム』からのシングルで、全米8位のヒットとなった。C.C.R.の代表曲として日本では圧倒的に有名な曲だ。
歌詞がベトナム戦争を批判し、「晴れた日に降るキラキラした雨」というのがナパーム弾のことを言ってるという説が広まったが、作者のジョン・フォガティは否定している。
バンド内での不和が高まっていった時期で、ある日雨を眺めながら、このバンドもそろそろ終わりかな、という寂しい気持ちで書いたのだそうだ。
C.C.R.のアルバムを1枚聴くなら、まずはベスト盤をお薦めする。それは、C.C.R.があの当時のロックバンドにしてはめずらしく、シングル・レコードに力を入れていたからでもある。
オリジナル・アルバムならやはり、『コスモズ・ファクトリー』がお薦めだ。
(Goro)
コメント
語るほど詳しくはないのですが。を前置きにして。
CCRは高校の頃CMで流れた「雨を見たかい」に聞き惚れてベストを買いました。
それで満足してオリジナルアルバムは持ってないので偉いことは言えないのですが、声がいいですよね。決してメロディーが凝ったものではないのに叙情が溢れ出るのがたまらないです。ビートルズやストーンズにはない土の香り(ストーンズにはあるか?)が田舎育ちにはたまらないのです。(ザ・バンドともちと違う、ちょっと湿った土。)
前述の曲ももちろんですが、ベストアルバムの最後を飾った曲「サムデイ・ネバー・カムズ」が印象に残ってます。バンドの終焉を見越したような切ないメロディーがグッときます。
サカモトさん、コメントありがとうございます。
よくわかります、わたしもジョン・フォガティの声が大好きです。本当に曲がシンプルなので、別の人が歌ったら確かにあれほど魅力的な歌にはならないでしょうね、
「サムデイ・ネバー・カムズ」はわたしも好きです、ベストテンからは漏れてしまったけれども。
なにしろ良い曲が多すぎるんですよね。