ジョニー・キャッシュ&ジューン・カーター/悲しきベイブ (1964)

Orange Blossom Special

【カバーの快楽】
Johnny Cash & June Carter
It Ain’t Me, Babe (1964)

オリジナルはボブ・ディランで、1964年のアルバム『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』に収録されている曲だ。

これをジョニー・キャッシュとジューン・カーターのおしどり夫婦がデュエットでカバーして1964年にシングルとしてリリース、米カントリー・チャートの4位まで上昇するヒットとなった。1965年のジョニー・キャッシュのアルバム『オレンジ・ブロッサム・スペシャル』にも収録された。

「君の望んでいる男は、強くて、正直で、おまえを守ってくれて、おまえの言いなりになる男。おれはそんな男になれない。おれじゃダメなんだ」と、実にいやらしい言い方で恋人に別れを告げる歌だ。ボブ・ディランの性格の悪さがよくわかる。

その頃にボブ・ディランと付き合っていた女性といえば、2ndアルバム『フリー・ホイーリン』のジャケットでディランと腕を組んで歩いているスーズ・ロトロという、もうかれこれ60年以上も世界中に顔バレしている一般人の女性である。

ちなみに彼女は、この曲を聴くたびに「頭がおかしくなるぐらい悲しませ、苦しめられる」と語っている。

キツいなあ。

別れたからといって、世界的に有名になったレコードのジャケットを後から変更するわけにもいかないだろうし、そうこうしているうちに時代を超えて聴き継がれちゃったりしてるわけで、これはキツいなあ。

有名人と付き合っていることをカミングアウトして、写真まで公表するということは、ちょっとの間のチヤホヤ感と引きかえに、生涯にわたる苦しみを背負うリスクがあるという教訓のようなジャケットだ。

それでも、これと同じようなことをSNSでしたがる有名人カップルは今も後を絶たない。彼女たちが「悲しきベイブ」にならないことを祈ろう。

おしどり夫婦のジョニーとジューンはそんな、性格の悪いボブ・ディランのトゲトゲ・チクチクした歌詞を、ユーモアを込めてデュエットし、皮肉っぽいが微笑ましいラブソングに変えている。

オリジナルも充分に名曲だが、このカバーもまた、生まれ変わって新たな輝きを帯びたディラン・ナンバーの一例だ。

It Ain't Me Babe

↓ ボブ・ディランのオリジナル。

Bob Dylan – It Ain't Me Babe (Official Audio)

(Goro)