1970年代前半に米ニューヨークで生まれたディスコ・ミュージックは、折からの流行に加え、1977年12月公開の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』の大ヒットによって世界的ブームとなった。
主題歌の「ステイン・アライヴ」をはじめビー・ジーズによる6曲が全米1位の大ヒットとなり、アルバム『サタデー・ナイト・フィーバー』は24週連続全米1位、18週連続全英1位、全世界で4,000万枚という未曽有の売り上げを記録した。
こうなると当然、目ざといロック・アーティストや伸び悩むロック・バンドなどが、この巨大な富を産む打ち出の小づち「ディスコ・ビート」に、わらわらと群がることになったのは、自然の摂理である。
そして実際、ディスコ・ビートをドーピングしたロックはどれも飛ぶように売れ、キャリア最高のヒットとなったアーティストも少なくなかった。
以下は特に成功を収めた、ディスコしちゃったロックの大ヒット曲、10組10曲です。
Bee Gees – Stayin’ Alive
言わずと知れた『サタデー・ナイト・フィーバー』の主題歌で、世界的ヒット曲。
ビー・ジーズはイギリス生まれオーストラリア育ちの3兄弟によるグループで、1960年代後半にソフト・ロック路線で人気を博したものの、その後低迷。
75年にディスコ・ビートを導入した「ジャイヴ・トーキン」が全米1位の大ヒットとなると、その後はディスコ・ビートのヒット曲を連発、それで白羽の矢が立ち『サタデー・ナイト・フィーバー』の音楽を担当することとなった。
The Rolling Stones – Miss You
『サタデー・ナイト・フィーバー』から半年、空前のディスコ・ブームの中、最初にディスコ・ビートをドーピングした大御所ロック・バンドはローリング・ストーンズだった。それがこの曲で、全米1位、全英3位の大ヒットとなった。
ディスコを中身のない音楽と蔑視したり敵視していたロック側のミュージシャンやリスナーもこれには驚いたが、しかしディスコ・ミュージックはそもそもソウルやファンクから派生した最新の黒人音楽だったわけであり、ブルース~ソウル~ファンクと黒人音楽を消化してきたストーンズが次にディスコ・ビートを取り入れるのは当然と言えば当然だったのだ。今聴けば、ストーンズらしさがよく出ている名曲だ。
Rod Stewart – Da Ya Think I’m Sexy?
ストーンズの「ミス・ユー」の大ヒットによって、ロック界でも解禁となった感のディスコ・ビートを次に使ったのはロッド・スチュワートだ。
シンセも大胆に使ってさらにディスコ・ガチ感が強いこの曲は、全米・全英で1位となり、ストーンズを超える世界的ヒットとなった。当時のディスコ・ミュージックの代表曲のひとつとなり、ロッド・スチュワートのキャリア中でも最高位のヒットとなった。
Blondie – Heart Of Glass
3rdアルバム『恋の平行線』からのシングルで、全米・全英とも初の1位となった、ブロンディの大ブレイク曲。
彼らはニューヨークのパンクの巣窟みたいなライヴハウス、CBGBの出身だったが、元からあったこの曲をプロデューサーの指示でディスコ・ビートにしてみたという。
それまでの7枚のシングルは全米チャートにかすりもしていないので、あらためてこの時代のディスコ・ビートの威力というのは凄かったんだなあと思う。
Kiss – I Was Made For Lovin’ You
まさかと思われていたハード・ロック界へもディスコ・ビートのドーピング汚染は拡大し、キッスのこのシングルは世界的ヒットとなり、彼らにとって最も売れたシングルとなった。
きっと古くからのファンは驚いただろうけど、当時中学生のわたしは、なんてカッコいいバンドの、なんてカッコいい曲だろう、となにも違和感もなくハマってたなあ。
Pink Floyd – Another Brick in the Wall Part 2
そしていちばん遠いと思われていたプログレ界にもまさかの汚染拡大である。
ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』からの先行シングルとなった、「教育なんて必要ない」と歌うこの曲は、ガチ・ディスコではないものの、仄かに香るディスコ・フレーヴァーが敏感に嗅ぎつけられたのか、全米・全英1位と、彼らにとってキャリア最大のヒットとなった。
Queen – Another One Bites the Dust
更にクイーンが追随するが、雑食性でなんでもありのクイーンならディスコ・ビートの導入もとくに違和感はない。この曲はベーシストのジョン・ディーコンが書いた曲だ。
8枚目のアルバム『ザ・ゲーム』からのシングルとなり、全米1位、全英7位の大ヒットとなった。アルバムもアメリカでは最も売れたクイーンのアルバムになった。
Kraftwerk – Das Model
YMOがお手本にしたドイツのテクノ・ユニット、クラフトワークが唯一の全英1位を獲得した、キャリア最大のヒット曲。
オリジナルのドイツ語版は1978年に本国のみでリリースされたがこのときはヒットには至らず、1981年に英語版をリリースすると上記の大ヒットとなった。生真面目な公務員が、無表情でちょっとだけ腰をクネクネさせて演奏しているような、可愛らしい曲だ。
The Clash – Rock the Casbah
パンク界の中でも雑食性のクラッシュのこの曲は、ダンス・ビートを使いつつもクラッシュらしいカッコいい仕上がりだ。全米8位となり、アメリカでの唯一のチャート入りを果たしている。
ドラマーのトッパー・ヒードンの作で、ドラム以外にピアノとベースも彼が弾いている。
しかし残念なことにこの頃のトッパーは薬物依存がエスカレートし、発売前にバンドを解雇されてしまった。だからPVに出演しているドラマーはトッパーじゃないのだ。トッパーの曲なのに。
Yes – Owner Of A Lonely Heart
ほぼ解散状態だったイエスが活動再開したのが1983年のアルバム『ロンリー・ハート(原題は”90125”)』であり、それまでの複雑難解なプログレッシヴ・ロックとはうって変わってポップな作風となった。
たぶんジェネシスやエイジアあたりのころびプログレの成功に刺激を受けて、彼らもポップ路線に改宗したのだろう。
そしてこのシングルはキャリア初の全米1位となり、最大のヒットとなった。
めでたし、めでたし。
以上、ディスコしちゃったロックたち【大ヒット10組10曲】Greatest 10 Rock Disco Songsでした
(by goro)