米テキサス州出身のジャニス・ジョプリンは、サンフランシスコのバンド、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーにヴォーカリストとして参加し、アルバム『ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー』で1967年にデビューしました。
ビッグ・ブラザーとはもう1枚『チープ・スリル』というライヴ・アルバムを発表後に脱退、その後ソロとして2枚のアルバムを発表しました。
1970年10月4日、最後のアルバム『パール』を制作するために滞在していたハリウッドのホテルの部屋で、ジャニスは遺体で発見されました。
死因は致死量のヘロインを使用したためと考えられています。
享年27歳。
ロバート・ジョンソン、ブライアン・ジョーンズなどの先輩が所属する「27club」に入会したわけです。つい3週間前にはジミ・ヘンドリクスも入会したばかりでした。
そのジミ・ヘンドリクスがエレキギターによって新たなロックの可能性を一気に拡げたように、ジャニスは女性ヴォーカルでロックを歌う方法を発明したと言えるのではないかと思います。
ブルースでもR&Bでもジャズでもカントリーでも、彼女が歌うとアラ不思議、なんでもロックになったってもんです。
ジャニスが死んでもうすぐ50年になりますが、彼女を超える衝撃と感動を与える女性ロック・シンガーは未だに出てきていないと思います。唯一にして無比の存在でした。
今回、あらためてジャニス・ジョプリンの全アルバムを聴き返して、今聴いてもやっぱりいいなあと思える名曲を、ランキングにしてみました。
以下は、わたくしゴローが愛するジャニス・ジョプリンの至極の名曲の、ベストテンです。
Little Girl Blue
3rdアルバム『コズミック・ブルースを歌う(I Got Dem Ol’ Kozmic Blues Again Mama!)』の収録曲。
2015年公開のドキュメンタリー映画『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』の主題歌にもなった。
ジャニス自身が歌詞を書き、「座って指を数えるかわいそうな女の子、降ってくる雨の粒を数えることしかできない女の子」と歌われる、孤独でなにも持たない少女を自伝的に描いたせつない歌だ。
Mercedes Benz
4thアルバム『パール(Pearl)』収録曲で、ジャニスが死の3日前に遺した、最後の録音。
神様に「ベンツをちょうだい、カラーテレビをちょうだい、街で一晩中ハジけさせて」とねだる歌だ。
伴奏は無く、ジャニスの靴音と声だけの録音だけど、それだけで充分聴ける曲になっているからたいしたものだ。
「ブルースの女王」ではなく、可愛らしい素のジャニスが聴けるような、ある意味アルバムの裏ハイライトのような曲でもある。
To Love Somebody
『コズミック・ブルースを歌う』収録曲。
元はビー・ジーズのオリジナル曲だけど、ほぼ原形をとどめないほど変わっている。
ジャニス版の、ブラスを中心にしたサザン・ソウルのようなアレンジが最高だ。
Maybe
『コズミック・ブルースを歌う』収録曲で、シングル・カットもされた。
ジャニスの歌唱も素晴らしいし、バックの演奏もいい。
One Night Stand
1982年にジャニスの未発表録音集として発表されたアルバム『白鳥の歌(Farewell Song)』収録曲。
1970年に録音されていたトラックで、バックの演奏はポール・バターフィールド・ブルース・バンド。プロデューサーをトッド・ラングレンが務めている。
ジャニスにはめずらしい、ポップな曲調だ。
シングル・カットもされ、全米35位まで上がった。
Kozmic Blues
わたしはジャニスのアルバムではこの『コズミック・ブルースを歌う』がいちばん好きだ。全体にバンドとアレンジがすごく良い。
それまでのバンドを脱退してソロになり、スタジオ・ミュージシャンを金で雇って作ったアルバム、などと批判もあったらしいが、それのなにがいけないのかわからない。それでジャニスの最高傑作が生まれたのだ。スタジオ・ミューシャン万歳である(だいたいわたしはビッグ・ブラザーの演奏があまり好きではないのだ)。
これはそのタイトル曲で、歌詞はジャニス自身が書いている。
Summertime
ジョージ・ガーシュウィンが1935年に発表した、登場人物がほぼ黒人だけのオペラ『ポーギーとベス』の中の1曲。
第一幕で漁師の妻クララが子守唄として歌い、その後、夫のジェイクが嵐の海で死んだ後にも歌われる。
翌年にビリー・ホリデイが歌ってヒットし、それ以来多くの歌手が歌うジャズのスタンダードになった。
ジャニスのバージョンは悲壮感漂う凄絶なものだ。
Move Over
死から3か月後に遺作として発表され、全米1位となったアルバム『パール』のオープニング・ナンバー。
数少ない、ジャニス自身が作詞・作曲をした楽曲で、ジャニスの曲では最もロック色の濃い、カッコいいナンバーだ。
Piece of My Heart
ビッグ・ブラザ―&ザ・ホールディング・カンパニーとのライヴ『チープスリル(Cheap Thrills)』 に収録された、アーマ・フランクリンが67年に発表した曲のカバー。
原曲を大きく崩していないが、燃えるような魂を持った獣が力の限り咆哮するようなジャニスの歌唱は圧倒的だ。
Me and Bobby McGee
カントリー・シンガーのクリス・クリストファーソンが書いた曲。
ジャニスの死後にシングル発売され、全米1位の大ヒットとなった。
ブルース、R&Bを中心に歌って来たジャニスにはカントリー・テイストの曲はめずらしいが、完璧に歌いこなし、そして彼女が歌うとやっぱりなんでも新たなロックになるのはさすがだ。
この曲ではアコギもジャニスが弾いている。
以上、《ジャニス・ジョプリン【名曲ベストテン】 でした。
(Goro)