「す、す、凄げぇ…」
彼らの3rdアルバム『OKコンピューター』を聴いたときにわたしはそう呻いて悶絶した。
ロックの突然変異的な進化を目の当たりにしたような気分だった。
まるで人類がいきなりH・R・ギーガーのエイリアンみたいな姿に変貌したかようなショックを受けた。
異形で、狂暴で、氷のように冷たかったり、雷のように衝撃的だっりするけれども、その造形は見こともないような美しさだった。世にも奇妙で美しいアルバムだった。
そして、次のアルバム『KID A』を聴いたときにわたしは感情を失い、座ったまま気絶してしまった。ついにロックの終わりが来た、と思った。
突然変異して狂暴化し過ぎた人類が、一瞬にして滅亡したみたいだった。
そう、わたしにとってレディオヘッドは、ロックを突然変異させ、そして滅亡させてしまった恐るべきバンドなのだ。
だからわたしにとっては、『KID A』が発表された2000年に、ロックの歴史は幕を閉じてしまったのだ。
もちろん現在もロックをやっている若者たちはいるけれど、彼らには申し訳ないけれど、わたしにはあの20世紀のロックという「懐かしの音楽」を再現しているだけのように思えてしまうのだ。
わたしにとってはレディオヘッドが、ロックの歴史の最後を飾る、大トリだった。
わたしは涙を浮かべて拍手した。
さよなら20世紀、さよならロックンロール。みなさん、どうか良い未来を。
とは言えどこかで、まったく新しい、魂が震えるようなロックの出現を待ち望んでいるのも事実である。そういえばこのブログは、そんな思いで始めたものだった。
以下は、わたしが愛するレディオヘッドの至極の名曲ベストテンです。
My Iron Lung
2ndアルバム『ザ・ベンズ』に先行して発表されたシングル。全英24位。
ナヨナヨした歌メロと、暴力的なギターのコントラストが刺激的な、初期のレディオヘッドらしいナンバーだ。
自身の弱さや愚かさを自虐的に語る歌詞で、「これが僕らの新曲。前のと同じだよ。時間をムダにしたな」とも歌っている。「前の」というのはたぶん「クリープ」のことだろう。
Burn The Witch
2016年のアルバム『ア・ムーン・シェイプト・プール』のオープニング・トラック。全英64位。
打楽器みたいに使われるストリングスがカッコいい、迫力のある曲だ。
サビで一転して優しいメロディを奏でるストリングスと、トム・ヨークのハイトーン・ヴォイスの融合が美しい。
Pyramid Song
『キッドA』の翌年に発表された5thアルバム『アムニージアック』からのシングル。全英5位のヒットとなった。凄いな。あの頃のイギリスは病んでたのかな。
ピアノとトムの声の美しい絡みと、複雑で異様な音響が融合した、心の深淵を覗くような美しい曲だ。
The National Anthem
2000年の問題作、『キッドA』収録曲。
不穏なベースラインとフリー・ジャズのようなホーンがカッコいいナンバーだ。
タイトルは「国歌」という意味だけど、こんな国歌を持つ国というのはどんな国なんだろうとつい想像してしまう。日本人みたいなお人好しで優しい国民ではなさそうだけど、でもなんだか強い意志を持ったイケてる国のような気がする。
Karma Police
90年代を代表する名盤『OK コンピューター』からのシングルで、全英8位のヒットとなった。
歌詞には深い意味はないらしいが、曲には緊張感があり、まるで彼岸から聴こえてくるような幽玄で美しい曲だ。
Just
2ndアルバム『ザ・ベンズ』からのシングル。全英19位。
グランジ・ロックのような激しいロックナンバーで、レディオヘッドの音楽性を決定づけているもうひとりの天才、ギターのジョニー・グリーンウッドのすべてを切り裂くような凶暴なギターが最高だ。
There There
6枚目のアルバム『ヘイル・トゥ・シーフ』は、ロック的な荒々しさやビート、メロディが戻って来た嬉しいアルバムだった(この一瞬だけだったけれど…)。
これはアルバムからの最初のシングルで、全英4位のヒットとなった。
とは言ってもそこはやはりレディオヘッドなので、そんなシンプルなものではない。
どこかの秘境の民族の、獣神に生贄を捧げる踊りみたいな。
Fake Plastic Trees
『ザ・ベンズ』からのシングルで、全英20位。
わたしがレディオヘッドにのめり込むようになったきっかけとなった曲だった。
レディオヘッドにしては単純な曲だけれども、なぜかこの曲はわたしの胸を刺し貫いた。
Paranoid Android
『OK コンピューター』からのシングルで、全英3位とキャリア中の最高位となる大ヒットを記録した。世にも美しい声で鳴く、突然変異の奇怪な怪物のような曲だ。
これは、1950年代に生まれたロックンロールという音楽の最期の、死の目前にした狂暴な姿である。
Creep
1stアルバム『パブロ・ハニー』からのシングル。全英7位のヒットとなり、レディオヘッドの名を知らしめた初期の代表曲だ。わたしにとっては、レディヘと言えばやはりコレなのだ。それはもう、衝撃的だった。
サビの前に待ちきれないようにして斬り込んでくるジョニーのギターの物凄いこと。こんな凄いギターの一撃は初めて聴いた。
そして、劣等感にまみれた少年の歌に、わたしが心の中に隠し持っていたトラウマが激しく反応してしまったのだった。
以上、レディオヘッド【名曲ベストテン】RADIOHEAD Greatest 10 Songsでした。
(by goro)