ジーン・クラーク『ホワイト・ライト』(1971)【最強ロック名盤500】#171

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【最強ロック名盤500】#171
Gene Clark
“White Light” (1971)

最近になって初めて聴いたアルバムである。
そのときの、驚くほど心が揺さぶられ、温泉に浸かってじわじわと体が温まっていくときのような感動の正体というのがもう、どうにも説明し難いのである。

聴き込めば聴き込むほどに、この作品のシンプルだが愛おしいメロディ、アコースティック楽器によるナチュラルで美しい響き、クラークの吐息まで伝わるようなリアルな歌声、そしてそれらが醸し出す哀愁や寂寥感や温もりに、心を奪われるのである。

1964年にロジャー・マッギンやデヴィッド・クロスビーと共に、ザ・バーズを結成したジーン・クラークは、1966年にそのバーズを脱退した。初期のバーズはボブ・ディランのカバー曲が目立ったが、「すっきりしたぜ」などオリジナル曲のほとんどは、このジーン・クラークが書いていた。

バーズ脱退後はブルーグラス・バンジョー奏者のダグ・ディラードとのコンビ、ディラード&クラークを結成してカントリー・ロックの好盤を2枚残したが、商業的成功は得られなかった。

本作はその後、1971年8月にリリースされた2枚目のソロ・アルバムである。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 The Virgin
2 With Tomorrow
3 White Light
4 Because of You
5 One in a Hundred

SIDE B

1 For a Spanish Guitar
2 Where My Love Lies Asleep
3 Tears of Rage
4 1975

B3「Tears of Rage」だけがボブ・ディランの曲で、あとはすべてオリジナルである。ジャンルで言うと、カントリー・ロックとスワンプ・ロックの中間辺りに位置するように思う。

プロデューサーはネイティヴ・アメリカンのギタリスト、ジェシー・エド・デイヴィスで、この剥き出しの魂みたいなオーガニックな味わいは彼の手腕に拠るところが大きいと思われる。ベースはフライング・ブリトー・ブラザーズのクリス・エスリッジが担当し、時折り耳を奪うような独特の味わいを聴かせる。

ボブ・ディランやロジャー・マッギンの影響を感じるクラークの歌声は、決して上手くはないものの、そのややフラついた感じが逆に親しみやすく、味わい深くもある。お店の味ではなく、家庭の味みたいな。

わたしはザ・バーズが昔から好きだったが、ボブ・ディランのカバーの画期的なアレンジとロジャー・マッギンの歌声が特に好きだったこともあって、メイン・ソングライターであるにもかかわらずジーン・クラークのことはあまり考えたこともなかった。このアルバムを聴いて、今更ながら「おみそれしました」と言うほかない。

本当につい1ヶ月ほど前に初めて、正直たいして期待もしないまま聴き始めたアルバムなのだけれども、A1「The Virgin」のイントロが始まった瞬間からわたしの心の中の何かがどよめいたのである。決して万人向けのジャンルではないけれども、このどよめきはわかる人にはわかると思うのだ。

本作もやはり商業的成功は得られなかったが、地味ながら全曲が名曲と言えるほどの内容であり、1971年というシンガー・ソングライターの時代に生まれた最高傑作のひとつに数えていい、隠れた名盤であると思う。

↓ イントロが始まった瞬間からわたしの心をどよめかせたオープニング・トラック「The Virgin」。

↓ 滅法美しい名曲「For a Spanish Guitar」。

(Goro)

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