【追悼】村上龍

時代のトップランナーとして疾走」芥川賞作家・村上龍さん(74)死去…事務所と幻冬舎が公表 「限りなく透明に近いブルー」でデビュー  当時の若者文化や社会の空気を描き反響<著作物一覧掲載>

 

村上龍は24歳で作家デビューした。

1983年、17歳のわたしが初めて彼の本『限りなく透明に近いブルー』を読み、続けて『コインロッカー・ベイビーズ』を夢中で読んでノックアウトされたときでもまだ彼は31歳だったので、当時の日本では最も若い小説家のイメージだった。

だからこんな、自分のような若者が読めばとんでもなく刺激的で面白い、おそろしくリアリティのある小説が書けるんだと思ったものだ。

そんな、いつまでも若いイメージがあったので、74歳で死去したと聞いて少し驚いた。もう、そんな歳だったのかと。まだせいぜい還暦ぐらいかと思ってた。

いやいや、あのころ17歳だったわたしが今や還暦なのだ、とようやく思い出し、そりゃそんな歳にもなるわなと納得した次第だ。自分の歳って、いつまで経っても、慣れることがない。

当時から村上龍は、特に若い読者の間では別格的な人気だったけれども、彼より3年後にデビューした村上春樹もまた、若い読者の間でどんどん人気が上昇し、「ハルキスト」を生み出していた頃だ。

二人は同じ村上姓で、春樹が3つ歳上の同世代で、講談社文庫では同じ黄色い背表紙で、よく比較されたものだった。

同じ村上でも作風は大きく違い、わたしの勝手なイメージとしては春樹がビートルズ、龍がローリング・ストーンズという感じだった。

春樹はポップでファンタジックで明るいイメージ、龍はリアルでダークで尖ったイメージと、ものすごく大雑把だけど、そんな印象を持っていたものだ。それに実際、春樹の小説にはビートルズの曲がよく出てくるし、龍の小説にはストーンズが出てくる。

わたしは1992年頃までの作品は龍も春樹もすべて読んでいたけれども、圧倒的に龍のほうが好きだった。先に挙げた2冊以外にも、『愛と幻想のファシズム』の壮大な世界観は圧巻だったし、『コックサッカー・ブルース』もまた大いに刺激的だった。『69』も好きだったし、『テニスボーイの憂鬱』も『5分後の世界』も面白かった。

内省的で過去に拘りニヒルな春樹作品に対して、外の世界を見つめ、時代の変化をリアルに書こうとする龍はまさに正反対を向いているようだった。

だからだと思うけれども、わたしも歳を重ねて社会人らしくなっていく過程で現在と未来とリアルのことしか考えなくなり、必然的に龍の方に共感するようになっていったのだ。純文学的な「自分探し」に「いつまでそんなことやってんだ」と呆れるようにもなっていた。

あらためて村上龍のwikiを開き、その著作一覧を見てみると、1997年以降の作品はまったく読んでいないことがわかる。わたしは30歳で転職したときに、この会社で出世して君臨するまでは読書の趣味を断って仕事に全集中することを決め、実際それから15年ほどはまったく本を読まなかったのだ。

現在は読書の趣味も復活し、電子版で1日も欠かすことなく本を読んでるけれども、主に同世代の現代作家ばかり読んでいて、思えば村上龍の作品からはすっかり遠ざかっていた。

訃報を聞いて、過去に読んだ作品などを懐かしく思い出し、スマホでAmazonを開いて、2000年の作品『希望の国のエクソダス』のkindle版を早速購入した。

現在読んでいる桐野夏生の本を読み終えたら、読み始めるつもりだ。そしてその後も、未読だった作品を片っ端から読むつもりだ。なんというか、大好物を大量に残していたことを思い出して、いま、舌なめずりしているような気分である。

(Goro)