英国最強女ロッカーの最高傑作 〜PJハーヴェイ『ストーリーズ・フロム・ザ・シティ、ストーリーズ・フロム・ザ・シー』(2000)【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#383

B0000542OV
⭐️⭐️⭐️⭐️

【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#383
PJ Harvey
“Stories from the City, Stories from the Sea” (2000)

「街の物語、海の物語」と題されたPJハーヴェイの5thアルバムは、彼女が映画出演のために滞在した、ニュー・ヨークの街にインスピレーションを受けて書かれた楽曲が中心となっている。

ニュー・ヨークと言えば、パンクの女王パティ・スミスの縄張りだけれども、そこに殴り込んできた、英国史上最強の女ロッカーといった趣だ。ジャケット写真はニュー・ヨークの街の交差点らしいが、PJがまるで女ヒットマンみたいに見える。

本作は2000年10月にリリースされ、全英23位、全米42位が最高位と大ヒットはしていないが、評価が高く、長く売れ続けたために100万枚を超え、PJハーヴェイのアルバムとしては最も売れたアルバムとなった。

【オリジナルCD収録曲】

1 ビッグ・エグジッド
2 グッド・フォーチュン
3 ア・プレイス・コールド・ホーム
4 ワン・ライン
5 ビューティフル・フィーリング
6 ザ・ホアーズ・ハッスル・アンド・ザ・ハスラーズ・ホア
7 ディス・メス・ウィア・イン
8 ユー・セッド・サムシング
9 カミカゼ
10 ディス・イズ・ラヴ
11 ホーセズ・イン・マイ・ドリームス
12 ウィ・フロート

これまでのアルバムがすべて彼女にとっての過激な音楽的実験だったかのように思えるほど、本作は楽曲もサウンドも完成度が高く、バラエティに富み、キャリアの集大成のような内容である。

初期のザラついたノイズ・ロックや、その後の不穏なエレクトロ路線から一転、本作はメロディがはっきりしたストレートでポップなアプローチも見せている。もちろん彼女の持ち味であるあの不機嫌さ、荒っぽさは無くなっていないが、荒削りなのではなく、堂々たる態度の荒々しさだ。

初めてPJハーヴェイを聴く人には、このアルバムから薦めたいと思うほど、彼女のアルバムの中では最も聴きやすく、解放感を感じる作品だ。

レディオヘッドのトム・ヨークをゲストに招き、「ディス・メス・ウィア・イン」ではデュエットもしている。シンプルなサウンドにPJのやけに色っぽい声とトムの幽霊みたいな声が絡み合って、ドキッとさせられるような優美さを醸し出している。他にも、「ワン・ライン」「ビューティフル・フィーリング」にもトム・ヨークはバック・コーラスとキーボードで参加している。

本作についてPJは次のように語っている。

「前2作では、ダークで不安をかき立てるような、気分が悪くなるような音を求めて実験を重ねてきた。このアルバムはその反動なの。『いや、私は絶対的な美しさが欲しい。このアルバムは、歌い、飛び立ち、みずみずしいメロディで満たされてほしい。私の美しく、豪華で、愛らしい作品にしたい』と思ったの」(英音楽誌『Q』 2001年のインタビューより)

英国の権威ある音楽賞〈マーキュリー賞〉(商業的な成功よりも音楽的な質と革新性を評価して毎年1作だけ最優秀アルバムを選ぶ賞) を、本作は女性アーティストとして初めて受賞した。

↓ リード・シングルとなった「グッド・フォーチュン」。MVはロンドンで撮影され、すべて即興で、PJがどんな動きをするか予測できないまま撮られたという。最後にPJはなぜか、ケバブ屋さんに入店する。

↓ 英国ロック女王の貫禄たっぷりのパフォーマンスがシビれるほどカッコいい「ディス・イズ・ラヴ」。

(Goro)