ディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』(1972)【最強ロック名盤500】#227

ライヴ・イン・ジャパン DELUXE EDITION

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#227
Deep Purple


“Made in Japan” (1972)

若い頃からハード・ロック・アレルギーを患っていたわたしは、この「史上最高のライヴ・アルバム」に挙げる人も多い、ディープ・パープルの『ライヴ・イン・ジャパン』を初めて聴いたのも実はたった1年半ほど前のことだった。

そしてだいたいその頃からわたしのハード・ロック・アレルギーは快癒し始めたのである。まさかこんなおじさんになってからアレルギーが治るとは思っていなかった。喜ばしい限りである。

本作は1972年8月の大阪フェスティバルホールと日本武道館での公演から選曲されたライヴ盤である。ディープ・パープル側の意向で、日本での限定販売のみ許可するという条件で、72年12月にLP2枚組で発売された。日本のオリコン総合チャートで14位のヒットとなり、さらにはあっという間に「輸出盤」となって海外にも出回り、世界中のファンが悶絶したため、翌73年には正式に世界規模で『Made In Japan』というタイトルで発売された。全米6位、全英16位と、世界的なヒットとなった。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ハイウェイ・スター
2 チャイルド・イン・タイム

SIDE B

1 スモーク・オン・ザ・ウォーター
2 ミュール

SIDE C

1 ストレンジ・ウーマン
2 レイジー

SIDE D

1 スペース・トラッキン

遡ること2023年の初秋のある日、家族の留守を狙って大音量で本作を聴いてみたのだった。LP2枚組で7曲しか入ってないとは、またずいぶん長い曲が多いんだなと、聴く前から少しげんなりした気分だった。

しかし、いきなり「ハイウェイ・スター」の圧巻の爆演にのけぞった。物凄いスピード感の爆音ライヴだ。これはとんでもないものが始まったぞ、と思いながら、なんだかドギマギしながら聴き進めた。

2曲目の「チャイルド・イン・タイム」もまたどえらい猛演だ。とんでもなく複雑な仕事を各々がこなしながらも猛然と疾走するバンドの一体感が凄い。

ちょうどこのブログの「ストーンズの60年を聴き倒す」の企画で、ストーンズのラフでルーズでテキトーなライヴ盤ばっかり聴いていたので、なんだかもう異次元の世界である。ロック・バンドってこんなにちゃんと演奏するものなんだと、妙な感心をしてしまうほどだった。

B1「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のイントロに手拍子が起こるところなどいかにも昭和の日本のコンサートという感じで微笑ましいが、曲が進むにつれそんな微笑ましいムードもぶっ殺されていく、これまたクソ熱い凄演だ。ライヴで本領を発揮するバンドなんだなとあらためて知る。

中間部ではヴォーカルとギターの掛け合いや、ノリノリのベースやドラムの乱れ打ち、キーボードのインタープレイなど、各パートの「名人芸」も披露され、会場もノっているのがわかる。エンターテインメント極まりない、この時代のならではの「ライヴショー」という感じが今聴くと意外と楽しかったりする。

そして最後の「スペース・トラッキン」の緊張感みなぎる暴風雨のような狂演を聴く頃にはもう、史上最高のライヴ盤と評されるのもあながち間違いではないなと納得してしまう。

急遽、公演をライヴ盤用に録音することになったと聞かされ、メンバーはかなり緊張していたというが、その緊張が良い作用となって集中力を高めていたのかもしれない。そのうえ日本の観客もまだ本場のハード・ロックを生で聴くという機会がめずらしかった時代のことであり、その前のめりのワクワク感や手に汗握るドキドキ感で満たされた会場の空気がまた相乗効果を生んで、一種異様な、物凄いライヴ・アルバムになったという気がする。いろんな意味で楽しめる、面白い、最高のライヴ盤だ。

最後の演奏が終わり、拍手が起こるまでの、観客が茫然自失としているかのような長い長い間がまたいい感じだ。

↓ オープニングからいきなりの激アツ「ハイウェイ・スター」。ちなみに、映像のメンバーの立ち位置と、アルバムに収録されている音の位置は逆になっている。

↓ D面全部を使って収録された19分超の「スペース・トラッキン」。史上最大の暴風雨の一夜を過ごしたような気分になれる狂演だ。

(Goro)

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