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Black Sabbath
“Paranoid” (1970)
若い頃からハード・ロックというやつが苦手で、その界隈を避けて生きてきたわたしでもさすがに「パラノイド」と「アイアン・マン」は知っていたし、カッコいい曲だなと思っていた。だからその界隈の中では、このブラック・サバスは好感を持っていたほうだ。
そんなわたしも最近は年をとったせいか、ハード・ロックに対する苦手意識や偏見もいつの間にか薄れ、逆に新鮮な気持ちで楽しめるようになってきた。これを成長というのか老化というのかはわからないけれども。
本作は1970年8月に発売された、彼らの2ndアルバムである。全英1位、全米12位を記録する大ヒットとなった。その重量級の重苦しいサウンドとホラー映画のような世界観は、ロック史に「ヘヴィ・メタル」という悪魔が誕生した瞬間でもあった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ウォー・ピッグス
2 パラノイド
3 プラネット・キャラヴァン
4 アイアン・マン
SIDE B
1 エレクトリック・フューネラル
2 ハンド・オブ・ドゥーム
3 ラット・サラダ
4 フェアリーズ・ウェア・ブーツ
A2「パラノイド」は全英4位の大ヒットとなり、他にもA1「ウォー・ピッグス」とA4「アイアン・マン」も彼らの代表曲となった。
バンドの中心人物で、ヘヴィ・メタルの父とも言えるオジー・オズボーンは、しかしビートルズの熱狂的ファンであることでも知られている。彼の奥方の「結婚してからというもの、夫がビートルズを聴かなかった日は1日もなかったわ」という証言でもそれは明らかだ。
その影響もあるのだろう、歌メロなど随所にポップな要素が見え隠れする。地獄の業火のようなギターに合わせて、地獄の鬼が低くハミングするようにベースもよく歌う。
ポップな要素とヘヴィなサウンドの組み合わせ、静かなパートから爆音へのドラマティックな展開などは、ニルヴァーナなど90年代のオルタナティヴ・ロックの手本にもなっていた。
このバンドの悪魔的な部分がヘヴィ・メタルに受け継がれ、人間くさい部分がオルタナティヴ・ロックに受け継がれたと言えるかもしれない。そんな両方の要素を併せ持つバンドであることは間違いない。
オジー・オズボーンのあの声もいいな。
ハード・ロックのヴォーカリストにありがちな、金切り声で「高い声出るぞぉぉぉーー」と叫ぶ感じは、わたしの嫌いなオペラみたいなのだ。普通の人が普通に一生懸命歌っている感じがわたしは好きなのだ。
悪魔に憑かれたかのような、重苦しく、攻撃的なサウンドながら、どこかポップだったり叙情性を感じさせたり、ロックンロールの高揚感を感じたりと、さまざまな要素が感じられる不思議な魅力を持った作品だ。最初から最後まで、飽きさせない名盤である。
↓ 全英4位のヒットとなった「パラノイド」。
↓ 重いサウンドとフックのあるメロディで代表曲となった「アイアン・マン」。
(Goro)