Manic Street Preachers
“This Is My Truth Tell Me Yours” (1998)
マニックスの5枚目のアルバムとなる本作には、当初から賛否両論が巻き起こった。
スロー・テンポやミドル・テンポの曲が多く、激しいハードなサウンドは控えめとなり、代わりに流麗なストリングスが心地よく包み、楽曲はアグレッシヴさが影を潜めてメロウな曲調に取って代わり、ジェームスは喉を潰して叫ぶことより、声のトーンを落として繊細に歌っている。
つまり、それまでの永遠の思春期みたいなヤンチャでパンクでハードではなくなり、真面目で内省的でメロディアスで大人びたところが、なんだかマニックスらしくないという批判に晒されたのだった。
ゆったりとしたメロディアスな楽曲が多いのは確かだけれども、しかし決して暗くはないし、重くもない。ブリット・ポップの狂騒が終わって疲れ切った耳には、心地よく染み込んだ。音楽的に「保守的」という批判もあったが、一見ありふれた大衆的な料理であっても独自の香辛料が加えられているようなマニックスらしい味わいはしっかりあって、わたしは「保守的」とは思わなかった。彼らの成長をわたしは喜んだものだ。
本作は1998年9月にリリースされ、マニックスにとって初の全英アルバムチャートの1位を獲得した。世界で500万枚以上を売り、名実ともに彼らを国民的バンドに押し上げた作品である。
【オリジナルCD収録曲】
1 ジ・エバーラスティング
2 輝ける世代のために
3 ユウ・ストール・ザ・サン・フロム・マイ・ハート
4 レディー・フォー・ドゥラゥウニング
5 ツナミ
6 マイ・リトル・エンパイアー
7 アイム・ノット・ワーキング
8 ユアー・テンダー・アンド・ユアー・タイアード
9 ボーン・ア・ガール
10 ビィ・ナチュラル
11 ブラック・ドッグ・オン・マイ・ショルダー
12 ノーバディ・ラブド・ユウ
13 S.Y.M.M.
2曲目の「輝ける世代のために」は、デビュー10年目にして初めての全英1位シングルとなった。
その原題の”If You Tolerate This Your Children Will Be Next”は、1930年代のスペイン内戦で、ナチスの支援を受けた反乱軍の爆撃によって殺された子供の写真を使用した、反ファシズムのポスターの警句を引用したものだ。その意味は「こんなことを許せば、次はあなたの子供がこうなります」というものだ。
この曲はそんな警句に触発された曲で、今の時代の不条理や悪事に対してもなにも行動を起こさなければそれを容認したことになり、次はわれわれの子供たちが被害者になるんだと、無関心でいることの危険さ、罪の重さについて歌っている。なかなか、耳の痛い話だ。
本作はベーシストのニッキー・ワイアーがすべての楽曲の作詞を担当している。リッチー・エドワーズが作詞をしていた初期の作品では政治的な怒りや毒舌的な内容のものが多かったけれども、ニッキーの歌詞はより平易で思索的であり、30歳になったこともあって、加齢や孤独、過去との訣別といった、より個人的でリアルなテーマに変わっている。
デビューから10年、ビッグマウスからの挫折で批判や嘲笑の中からスタートし、バンドの顔だったリッチーを失い、苦難と波瀾を乗り越えながら、イメージとは真逆の地道な努力を重ねて掴んだ英国ナンバーワン、国民的バンドの称号は、真に価値ある栄光だった。
デビュー当時はただの誇大妄想狂のクソガキのたわ言と思われていた”You Love Us”という言葉が、10年の時を経て、遂に現実となった瞬間だった。
やったね。
よくやった。
本当にあなたたちは、よく頑張りましたよ。
↓ アルバムのオープニングを飾る「ジ・エバーラスティング」。全英11位まで上昇した。
↓ 10年目にして初の全英1位シングルとなった「輝ける世代のために」。
(Goro)
