アメリカーナの女王 〜ルシンダ・ウィリアムス『カー・ホイール・オン・ア・グラヴェル・ロード』(1998)【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#373

Car Wheels on a Gravel Road

【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#373
Lucinda Williams
“Car Wheels on a Gravel Road” (1998)

ルシンダ・ウィリアムスは米ルイジアナ出身、1979年に26歳でデビューした。デビュー・アルバムは、ブルースとカントリーのカバー・アルバムだった。

ヒット曲には恵まれなかったが、地道にインディーズで活動し、19年目の1998年にやっと5枚目のアルバムとなる本作を発表すると、全米チャート65位ながら、グラミー賞の「ベスト・コンテンポラリー・フォーク・アルバム賞」を受賞する。当時45歳の遅咲きである。

それまで、「カントリーにしてはロックすぎるし、ロックにしてはカントリーすぎる」と評され、メジャー・レーベルからはなかなか相手にされなかったが、本作では、カントリーの物語性、ブルースの重み、フォークの親しみやすさ、ロックの衝動を、絶妙なバランスで融合させることに成功した。

そして、このスタイルは「アメリカーナ」という新たなジャンルを定義づけた作品となった。以降、ルシンダ・ウィリアムスは「アメリカーナの女王」として存在感を放つことになる。

【オリジナルCD収録曲】

1 Right in Time
2 Car Wheels on a Gravel Road
3 2 Kool 2 Be 4-Gotten
4 Drunken Angel
5 Concrete and Barbed Wire
6 Lake Charles
7 Can’t Let Go
8 I Lost It
9 Metal Firecracker
10 Greenville
11 Still I Long for Your Kiss
12 Joy
13 Jackson

伝統的で普遍的な。親しみやすい歌があり、同時に、新鮮な切り口と時代感覚を持つ名曲や佳曲の詰め合わせのような名盤だ。

本作の制作には6年が費やされたという。

当初、長年の相棒でプロデューサーを務めてきたガルフ・モーリックスと録音を進め、90%まで完成していたにもかかわらず、ルシンダはその出来に納得せず、すべての音源を破棄して最初から作り直すという決断を下した。それによって10年以上彼女を支えたガルフ・モーリックスとの関係が破綻し、彼は制作途中で去ることになった。

その後、スティーヴ・アールとレイ・ケネディを新プロデューサーに迎えるが、ルシンダの細部へのこだわりや一音一音への執着にアールが苛立ち、「ルシンダ、これはただのレコードなんだ、いい加減にしてくれ!」と叫んだという逸話がある。

このときのことをルシンダは次のように語っている「あのアルバムの制作は、一言で言えばめちゃくちゃだったわ。当時は自信がなくて、自分の喉から出るすべての音に自意識過剰になっていたの。完璧主義だったというより、ただ怖かったのね」(UNCUT誌インタビュー, 2023年再掲)

「完璧」などという、音楽作品にはありえない、必要ですらないものにこだわりながらも、彼女の歌声は決して自信や確信に満ちたものではない。だからこそ正直で素直な音楽として、心に響く。

アルバム・ジャケットもまた素敵だ。

↓ ミネソタ州のシンガー・ソングライター、ランディ・ウィークス作のカバーで、ルシンダ・ウィリアムスにとってのブレイク曲となった「Can’t Let Go」。

↓ ルシンダ自信の作で、アルバムからのファースト・シングルとなった「Right in Time」。

(Goro)