
妖しげな香りをふりまきながらも高い知性を持ち合わせ、極上のポップセンスを持ちながらアングラ嗜好であり、芸術家のようでも哲学者のようでもあり、博愛的なのか変態的なのか、なにをしでかすかわからないような「危険人物」の雰囲気を、デヴィッド・ボウイは生涯持ち続けた。
芸術面と商業面を両立させ、時代が変わっても常に革新的であり続けた、唯一無二のロック・アーティストだった。
彼がこの世からいなくなってしまったことは寂しいけれども、同時代に彼がこの世に存在して、素晴らしい音楽を遺してくれた奇跡を心から喜びたい。
ここではそんなデヴィッド・ボウイの数ある名曲の中からわたしが愛する10曲を選んでみたが、同じくボウイを愛するファンの方々から大いに異論が出るのは覚悟の上だ。
そのキャリアにおいてボウイは、ブレイクを果たしたグラム・ロック時代、ソウルやファンクへ方向転換したアメリカ時代、ブライアン・イーノとのコラボで製作されたベルリン時代、ポップ路線でファン層を広げた80年代と、さまざまに音楽性を変化させていき、彼のファンもそのどの時代が好きかでまた全然チョイスが違ってくるだろう。
わたしはやはり最初に好きになったのがグラム・ロック時代のボウイだったので、ここで選んだ10曲もその時代に偏ってしまったが、変に小賢しくバランスを考えたり、カッコつけたりすることなく、偏向上等!で好きな10曲を率直に選んだつもりだ。
以下は、そんなわたしが選んだデヴィット・ボウイの名曲ベストテンです。
Diamond Dogs
デヴィッド・ボウイの、8枚目のアルバム『ダイアモンドの犬』のタイトル曲だ。このアルバムはクソ評論家たちには不評だったらしいのだけど、わたしは昔からこの曲もアルバムも大好きだった。
ちょっとローリング・ストーンズの「ブラウン・シュガー」を想起させる、猥雑なロックンロールがたまらない。ボウイからいつも感じる、「静かなる狂気」も相変わらずじとーっと沁みてくる。
Lady Stardust
デヴィッド・ボウイの5枚目のアルバムにして代表作『ジギー・スターダスト』収録の、ピアノで始まる、美しいメロディのバラードだ。初めて聴いたときから強烈に心を動かされた曲だった。
まあ歌詞の意味はてんでわからないが、ジギー・スターダストには実はどこかに分身がいて、それが妖艶なレディ・スターダストで、二体が交わってひとつの肉体に戻ることをいつも希求しているのだ、ということだろうと想像しながらわたしは聴いていた。
いや、たぶんそんな歌詞はないが、あくまでも個人的解釈である。
Life On Mars?
1971年の4thアルバム『ハンキー・ドリー』からシングル・カットされ、全英3位のヒットとなった初期の代表曲。フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」と同じコード進行を使っているそうだ。サビで思いっきり張り上げるボウイの高音が気持ちいい。
The Man Who Sold the World
1970年11月にリリースされた3rdアルバム『世界を売った男』に収録されたタイトル曲。
グラム・ロックの時代よりも前の曲だが、ミック・ロンソンのギター・リフも印象的な、最初期の名曲だ。グニュグニュと加工されたヴォーカルの妖しげで不穏な感じがまたいい。
Ashes To Ashes
13枚目のアルバム『スケアリー・モンスターズ』からのシングルで、全英1位となった大ヒット曲だ。この頃のボウイはすでに十年選手でありながら、80年代ニュー・ウェイヴの先端をいってるような音楽をやっていたものだ。
パンク革命でオールド・ロックのアーティストがバタバタと斃れていく中で、ちゃんと時代の先頭を走り、商業的にも成功させていたのだから大したものだ。
なぜそんなことができるかというと、そりゃやっぱり、天才だからだろう。
Quicksand
『ハンキー・ドリー』収録曲。多重録音されたアコースティック・ギターとミック・ロンソンによるストリングスのアレンジが美しく、せつない歌メロがたまらないが、どこか虚無的な印象もあるのがまたいい。有名な曲ではないが、わたしはいつ聴いても感動する。
Starman
アルバム『ジギー・スターダスト』からシングル・カットされ、全英10位と、ボウイにとって初めてのトップ10ヒットとなったブレイク曲。この曲もまたメロディが美しくドラマチックな名曲だ。
表面的にはSF風でギンギラのグラム・ロックだけど、アコギをサウンドのベースにしているところがまた味わい深い。
Heroes
ボウイがベルリンに移住していた時代に作られた11枚目のアルバム『英雄夢語り(ヒーローズ)』のタイトル曲だ。ブライアン・イーノとの共作で、ジャーマン・ロックの影響を受けていると言われている。
当時のジャーマン・ロックと言えば、カンとかノイとかクラフトワークみたいな、電子音的でミニマル的で無感情なイメージだけど、この曲からはボウイらしい熱いものを感じる。
Suffragette City
宇宙から来たバイセクシャルのロック・アーティストが地球でスーパースターになり、そして凋落して破滅するというストーリーのアルバム、『ジギー・スターダスト』のクライマックスに位置する、疾走感溢れるロックンロールだ。
この曲ではジギーの凋落が歌われているはずなのだけど、まあどんな訳詞や解説を読んでもさっぱり意味がわからない。結局どうしてジギーは落ちぶれたのかよくわからないのである。
曲調からして「派手に暴走しちゃった」というのは漠然とではあるけれど伝わってくる。きっとロックスターがやりそうなありとあらゆることをやりつくしたのだろう。
Ziggy Stardust
代表作にして歴史的名盤『ジギー・スターダスト』のタイトル曲だ。
永遠に宇宙空間を漂い続ける孤独な生命体から送信され、地球の孤独な若者だけが受信できるメッセージのようなアルバム、なんて勝手に想像しながら、若き日のわたしはよく深夜にヘッドホンで聴いたものだった。
一度聴いたら忘れられない、メロディアスでカッコいい完璧なロックナンバーでありながら、なぜか絶望的な寂しさのような哀愁も漂う名曲だ。
デヴィッド・ボウイを初めて聴くなら、迷うことなく『ジギー・スターダスト』から聴くことをお薦めする。ボウイの代表作であると同時に、ロックの歴史においても十指に数えられるほどの歴史的名盤だからだ。
レーベルを何度か移籍しているのでベスト盤も各種存在するが、キャリア全体を総括したオールタイム・ベスト『レガシー 〜ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・デヴィッド・ボウイ』がお薦めだ。
(Goro)


