
ブライアン・ジョーンズをリーダーとして1962年に結成されたザ・ローリング・ストーンズは、当初からアメリカの黒人のブルースをイギリスに広めるという目的で活動していて、オリジナル曲を作ることはまったく考えていなかった。
しかし、ビートルズの世界的ブレイクとともにオリジナル曲が求められる時代になり、ストーンズもマネージャーに強要されるような形でオリジナル曲を少しずつ書き始めた。
そんなわけなのでストーンズの最初の3枚のアルパムは、各12曲収録中、オリジナル曲は3〜4曲だけで、あとはすべてブルースやソウルのカバーだ。
4枚目以降は収録曲のほとんどがオリジナル曲で占められるようになったが、それでも毎回1〜2曲はカバー曲が含まれていて、そこにストーンズの本来の姿、彼らの真髄みたいなものが見えるようで、ファンは楽しみにしたものだった。
先日の記事では、ストーンズの代表曲以外でわたしが「偏愛」するオリジナル曲のベストテンの記事を書いたけれども、今回はストーンズのカバー曲の中から、わたしが特に偏愛しているカバー曲のベストテンを選んでみようと思う。
Going to a Go-Go (1982)
1982年リリースのライヴ・アルバム『スティル・ライフ』収録曲。シングル・カットもされて、全米25位、全英26位まで上昇した。
クールなリズム隊と、キースらしい間をたっぷり取ったリズムギターの絡みがカッコいい。
原曲は、初期モータウンの屋台骨を支えたスモーキー・ロビンソン率いるザ・ミラクルズが1965年12月にリリースしたシングル。全米11位のヒットとなり、このヒットをきっかけに〈ゴー・ゴー・クラブ〉という形態のダンスホールが世界的な流行へ拡がっていったという。
I Don’t Know Why (1975)
DECCA在籍時代(1963〜70)の未発表音源を集めたアルバム『メタモーフォシス』収録曲。1969年の『レット・イット・ブリード』の制作時に録音されたもののアルバムには収録されず、お蔵入りになっていたものだ。
1969年7月3日、スタジオでこの曲を録音していた最中のメンバーに、ブライアン・ジョーンズの訃報が届いたという。哀愁を帯びたリード・ギターはミック・テイラーだろう。
原曲はスティーヴィー・ワンダーが1968年にリリースしたシングルだ。
That’s How Strong My Love Is (1965)
英国盤3rdアルバム『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』収録曲。この時期のストーンズはデビューしたばかりのオーティス・レディングの曲を3曲もカバーしていて、この新しいスタイルのソウル・ミュージックにゾッコン惚れ込んでいたのだろうと思われる。ミックの歌い方も、まるでオーティスのモノマネをしてるような歌い方なのが微笑ましい。
オーティス・レディングの原曲は1965年1月に先行シングルとしてリリースされ、2ndアルバム『ソウル・バラードを歌う』に収録された。「おれの愛はなんて強いんだろう!」と歌う名唱が感動的なオーティスの代表曲だ。
I Can’t Be Satisfied (1965)
カントリーの要素が入ったようなこのブルースは「苦労ばかりで満足なんてできやしない。泣けてくるぜ」と歌う、わたしのお気に入りだ。ストーンズの英国盤2ndアルバム『ザ・ローリング・ストーンズ No.2』に収録されている。
下のMVは2006年のツアーのリハーサルの様子を捉えたものだが、いい歳こいたブルース小僧たちが楽しんでる様子がたまらなくて、もう何回も見ている。
オリジナルはそんな彼らの大師匠マディ・ウォーターズが1948年にリリースした3枚目のシングルのB面に収録された。マディ(Vo&G)とビッグ・クロフォード(B)の2人による演奏だが、踊るベースと跳ねるギターが絡み合ってグルーヴを生み出す、まさにロックンロールの原典だ。
She Said Yeah (1965)
英国盤3rdアルバム『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』のオープニング・トラック。
もしかするとこれが史上初のパンク・ロックだったのではと思うほど、暴力的な演奏が衝撃的だ。
原曲は米ニューオーリンズ出身のシンガー・ソングライター、ラリー・ウィリアムズの1958年のヒット曲だ。
Stop Breaking Down (1972)
1972年の名盤『メイン・ストリートのならず者』収録曲。1968年〜72年の黄金期のストーンズのブルース・カバーには、デビュー当初の疾走感や初々しさが失われた代わりに、名人芸と荒っぽさを両立してきた凄みに圧倒される。
このカバーはミックの噛み付かんばかりのヴォーカルと不思議なハーモニカ、キースらしい暴力的なリズムギター、ミック・テイラーのスライド・ギター、そしてイアン・スチュワートのピアノと、この時期のストーンズの総力結集的なカバーだ。
原曲はロバート・ジョンソンが1938年に録音した「ストップ・ブレーキング・ダウン・ブルース」だ。
You Gotta Move (1971)
1971年の名盤『スティッキー・フィンガーズ』収録曲。わたしがまだストーンズもブルースもよくは知らない頃に聴いたこの曲はなかなかの衝撃だった。
キースのアコギはよくこんなダランダランに弾けるもんだと感心したし、ミック・テイラーのエレキギターはまるで黒人歌手が歌っているかのようだった。それに合わせて歌っているミックはあえて黒人訛りで歌っているらしい。
もともとは古いゴスペル・ソングだったようだが、スローなスライド・ギターのアレンジで1965年に録音したのがミシシッピ州出身のブルースマン、フレッド・マクダウェルだった。ストーンズはこのマクダウェルのバージョンを手本にしているようだ。
Mercy, Mercy (1965)
英国盤3rd『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』収録曲。イントロで歪んだギターが絡んでくるところがたまらない。ギターとビートが強く、ソウル・ミュージックをロックに解釈し直した感じだ。
ミック・ジャガーはオリジナルのドン・コヴェイを手本にした歌い方で、白人ながらソウル・ミュージックの歌い方をマスターした感じだ。
原曲は米ノースカロライナ州出身のソウル・グループ、ドン・コヴェイ&ザ・グッドタイマーズで、全米35位まで上昇したヒット・シングルだ。ちなみにリード・ギターを弾いているのは、無名時代のジミ・ヘンドリックスだ。
Route 66 (1964)
英国盤1stアルバム『ザ・ローリング・ストーンズ』のオープニング・トラックだ。
これぞ初期ストーンズの真髄といった演奏で、バンドが前のめりに一体となってグイグイ突っ走るドライヴ感、弾丸のようなグルーヴがたまらない。これが、R&Bがロックへと進化した瞬間のように聴こえる。
オリジナルはボビー・トゥループが、1946年に作詞・作曲し、ナット・キング・コールの録音によってヒット、その後ジャズのスタンダードとして親しまれた。1961年にチャック・ベリーもカバーしてるので、ストーンズはそれを手本にしたと思われる。ここではボビー・トゥループ本人が1957年に録音したバージョンを挙げておく。
Just My Imagination (1978)
1978年の大ヒット・アルバム『女たち』収録曲。テンプテーションズの、甘く優しい声でスローテンポで歌われるソウル・ナンバーを、3本のギターが見事に絡み合うギター・ロックにアレンジしたのが秀逸すぎる。
1番、2番、3番で歌メロが微妙に変化していくのがまた面白い。わたしはテンプテーションズのファンでもあるのだけれど、ストーンズ版が圧倒的に素晴らしい。
原曲はテンプテーションズが71年にリリースしたシングルで、全米1位の大ヒットとなった。
以上わたしの、ザ・ローリング・ストーンズ【偏愛カバー曲ベストテン】でした。
2年ほど前に『ストーンズのカバー原曲を全発掘!』という全7回のシリーズ記事も公開していますので、興味のある方はプログ上部の検索窓から「ストーンズのカバー」で検索してご覧ください。
(Goro)
コメント
ワタクシも1位は全く同じです!
キースのコーラスがたまらなく好き。
寒い日の夕方、夕焼けを見ながらクルマで爆音で聴くと、
かなりグッときます。
おー、気が合いますね!
べつにストーンズではヒット曲でもなければ、定番曲というわけでもないので、これが一致するのはかなりレアなことだと思います。
やっぱりアイアイ♪さんとはどこか深いところで通じ合うところがあるように思いますね!