パンク・ロックのシンボルと言ったらやっぱりセックス・ピストルズだけれど、ピストルズ以上に幅広く聴かれ、支持されたパンク・ロックのバンドと言ったら、このザ・クラッシュだけだろう。
ザ・クラッシュは、1977年に名盤『白い暴動』でデビューし、その後はパンクにとどまらず、スカやレゲエ、ダブ、カリプソ、ヒップ・ホップ、ニュー・ウェイヴなど、様々な要素を取り入れて音楽性を拡げ、パンクの枠を超えて、幅広いロックリスナーたちに支持された。
好みによって好きなアルバムは分かれるだろうけど、ロック好きならどれかにはきっとハマるにちがいない。様々な音楽スタイルに挑戦し、最後にはザ・クラッシュとしか言いようのない独自のスタイルを創り上げた。その意味で、70年代のパンク・ロック・バンドで最も大きな足跡を残したバンドと言えるだろう。
以下はそんなザ・クラッシュの、わたしが選んだ【名曲ベストテン】です。
Police on My Back (1980)
1980年発表の4thアルバム『サンディニスタ』収録曲。スカッと気持ちのいいキャッチーなロックンロールだ。この曲はカバーで、原曲はイギリスのバンド、The Equalsが1968年に発表した曲だ。
おまわりさんに追いかけられて、月曜も火曜も水曜も木曜も金曜も土曜も日曜もずっと逃げ続けるという歌である。ミック・ジョーンズの溌剌とした歌いっぷりが爽快だ。
Train in Vain (Stand by Me) (1979)
3rdアルバム『ロンドン・コーリング』収録曲。シングル・カットされ、全米23位と、初めて全米チャート入りを果たしたヒット曲。
軽快なビートの失恋の歌で、あまりにポップでクラッシュらしくないため若い頃はあまり好きではなかったけれども、今聴くとこの曲の親密さや、良い意味での軽さみたいなものがすごくいいなと思うようになった。
社会派だけじゃないし、パンクやレゲエだけでもないという意味で、幅広い音楽性を示した、その意味では逆にクラッシュらしい曲とも言える。
Stay Free (1978)
2ndアルバム『動乱(獣を野に放て)』収録曲。
学生時代の悪友との悪行三昧の日々を振り返り、思うところはいろいろとあるけれど、今はそれぞれが違う道を歩んでいる。おたがい自由に生きようじゃないか、今度会ったら一杯おごってくれ、とそんな歌だ。
クラッシュにはめずらしい、泣かせる曲である。ミック・ジョーンズの声がまたこの曲によく合ってるのだ。
Straight to Hell (1982)
5thアルバム『コンバット・ロック』収録曲。レゲエやカリプソあたりから派生したような新鮮なリズムに、カラカラに乾燥した熱風にたゆたうようなギターの音色が美しい。ゆったりと時間が過ぎていく感じがいい。
ベトナム戦争後に見捨てられた米兵とベトナム人女性の間に生まれた子供達の悲劇や、移民排斥と失業問題に揺れるイギリス社会など、「見捨てられた者たち」を歌った曲だ。
罪深い故に滅びゆくすべての文明人のために、時空を超越して漂い続ける歌のようだ。
Death or Glory (1979)
『ロンドン・コーリング』収録曲。ミック・ジョーンズが、ローリング・ストーンズ風のギターにこだわったという作品。
「死か栄光かなんて言ってても、そのうちただの昔話になるだけさ」と歌うこの曲は、かつて世界に中指を立てたパンクスたちも、現実に向き合うと妥協していく様を自嘲気味に歌った曲だ。クラッシュが自分たちの英雄像をあえて壊したとも言える。
Janie Jones (1977)
1stアルバム『白い暴動』のオープニングを飾る曲。初めて聴いたときから、このいきなりのアッパー・カットのような強烈パンチにKOされた気分だった。
ジェニー・ジョーンズは60年代に活躍したイギリス人の女性アイドル歌手で、公の場所にトップレスで現れたり、自宅で乱交パーティーを開いたり、売春斡旋で逮捕され服役するなど、数々のスキャンダルで有名だった。ここでは彼女を反骨心と解放の象徴として歌っている。
Spanish Bombs (1979)
『ロンドン・コーリング』収録曲。スペイン戦争なんてシリアスな題材のわりにはものすごくポップで明るい曲だ。
当時の他のパンク・バンドと比べても別格的にクラッシュが面白いのは、ゴリッゴリの社会派でありながらユーモアやポップセンスがちゃんとあるからだ。
ずっと同じパターンの繰り返しなのになぜか飽きない。ジョーとミックの声のコントラストがまたすごくいい。
White Riot (1977)
1977年3月にリリースしたクラッシュのデビュー・シングル。荒っぽく、騒々しい、いかにもパンク!といった、クラッシュの原点だ。
「黒人たちは権利を得るために立ち上がっているのに、白人はなぜ黙っている?」と問いかけ、「おれは暴動を起こしたい!」と連呼する、挑発的な歌だ。
ジョー・ストラマーは特にこの曲にこだわり、ライヴでは必ず最後にこの曲を演奏したという。
London Calling (1979)
3rdアルバム『ロンドン・コーリング』のタイトル曲で、たぶんクラッシュでは1番有名な曲だろう。全英チャートでは11位どまりだが、意外にもこれが彼らのチャート最高位である。
それにしてもあの1stアルバムの、荒っぽいパンク・ロックをやっていた連中がたった2年でこれほどオリジナリティ溢れる曲を書くようになったと考えると、ちょっとした感動を覚える。
クラッシュがパンクの殻を破り、新時代のロックを創造した、その象徴的な曲だ。
Rudie Can’t Fail (1979)
『ロンドン・コーリング』収録曲。スカのビートとロックのメロディを融合させた、クラッシュのオリジナル・スタイルの完成品とも言える名曲だ。
「ルーディ」とは、ジャマイカのスラングで不良少年のことをさす「ルード・ボーイ」を縮めたものだ。社会から落ちこぼれた若者の焦燥感と挫折を描き、クラッシュも出演した映画『ルード・ボーイ』のエンディング曲にも使用され、思わずグッときたものだ。それ以来、この曲を聴くと胸が熱くなる。
最後に、まだクラッシュを聴いたことがなくて、もしこれを読んで興味が湧いたら、あえてベスト盤ではなくて、パンク好きなら『白い暴動』、ロック全般が好きなら『ロンドン・コーリング』あたりから聴いてみることをお薦めしたいと思います。
(Goro)
コメント
これまた難しいお題で(笑)….
どうやっても万人が満足する回答はありえませんが、個人的には、
(White Man) in Hammersmith Palais)「ハマースミス宮殿の白人」
がナンバーワンです!!
それ以外は、自身で考えるランキングにかなり近くてビックリしました。
めちゃ難しかったです(笑)
「ハマースミス宮殿の白人」は、クラッシュの最高作と言われるほど評価が高いのは知っていますが、わたしには今ひとつよくわからないのです(涙)
オリジナル・アルバムに入っていないので、聴いたのがかなり後になって、もうクラッシュもあんまり聴かなくなった頃だったこともあり、タイミングを逸したからかなとも思います。