わたしがスマッシング・パンプキンズの音楽に出会ったのはあの夢のような1991年、米国のオルタナティヴ・ロックと英国のインディ・シーンがリンクしながらムーヴメントとなって活況を呈し、次々とロック史に残る名盤が生まれ、ロックの新時代を告げた年だった。
1977年のパンク・ムーヴメントはまだ幼過ぎて体験することが出来なかったわたしにとっては、初めてのロックの熱い盛り上がりに興奮しながら刺激的な日々を送った時代だった。
そんな、名盤が続出した1991年に、わたしは彼らの1stアルバム『ギッシュ』に出会った。
当時の米オルタナティヴ・ロックの他のバンドに比べても、圧倒的なクオリティの高さは群を抜いていて、わたしは「90年代のツェッペリンだ!」と思ったものだった。
その後も彼らは、アルバムを出すたびに進化し、新しいロックのスタイルやサウンドを聴かせて楽しませてくれた。
今回、あらためてスマパンをひと通り聴き返してみた。正直、もう30年も前から聴いていると飽きていたりもするけれど、それでも今聴いてもやっぱりいいなあと思える名曲を、ランキングにしてみた。
以下は、わたしが心から愛するスマッシング・パンプキンズの名曲ベストテンである。
I Am One (1990)
インディー・レーベルからリリースした、彼らのデビュー・シングル。
翌年発表の1stアルバム『ギッシュ』のオープニング・ナンバーとなり、わたしは「どれどれ、どんな新人バンドかな」とCDをかけた瞬間にブッ飛んでそのまま後ろにでんぐり返ったものだった。
デビュー・シングルからもうすでにスマパン・グルーヴは完成されていたのだった。
新人がいきなりオールスター戦出場みたいな、超オルタナ級だったのである。
Tonight, Tonight (1995)
1995年10月発表の3rdアルバム『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』からの4枚目のシングルとなった曲。ストリングスのアレンジが印象的な、壮大流麗な曲だ。
米オルタナチャート5位、全英7位のヒットとなり、批評家にも絶賛された。
Bullet with Butterfly Wings (1995)
全米1位となった3rdアルバム『メロンコリーそして終りのない悲しみ』からの第1弾シングル。米オルタナチャート2位、全英20位のヒットとなった。
このアルバムが出たときは、2枚組という大作にまず驚き、さらに全米1位になったと聞いたときにはなんかの間違いじゃないかと思ったほどだった。驚いたのなんの。
オルタナティヴ・ロックが普通にメインストリームで売れる時代になったのだなあと感慨深く思ったものだ。そして同時に、ちょっとだけ寂しくも思った。だってもうそれはオルタナティヴ・ロックではないということだから。
Disarm (1993)
1993年7月にリリースされた2ndアルバム『サイアミーズ・ドリーム』収録の、シリアスなバラード。米オルタナチャート8位、全英11位のヒットとなった。
「僕の中の殺人者は、君の中の殺人者。この微笑みを君に送るよ」と歌う、ビリーのちょっとヤバいところが出た曲。
ていうか、もともとスマパンのそういうところがいいのだけど。
Siva (1991)
スマパンはインディ・レーベルからシングルを2枚出した後、1991年5月に1stアルバム『ギッシュ』でメジャー・デビューした。この曲はその1stアルバムからの最初のシングルである。
オルタナ系らしからぬ、高度な技術と楽曲の高い完成度、4人の息がぴったり合った精密なグルーヴに圧倒されたものだ。
Cherub Rock (1993)
2nd『サイアミーズ・ドリーム』のオープニングを飾る曲。
CDを聴き始めてもうこの1曲目で1stからの大きな飛躍と成長を感じ、アッと驚いてそのまま後方へでんぐり返ったほどだった。
実は1stの『ギッシュ』は、評価が高かったにもかかわらず、あまり売れず(全米146位)、次が正念場の思いでビリーもメンバーも必死だったらしい。
結果はアルバムが全米10位という、特大ヒットに。めでたし、めでたしだ。
そしてこのシングルも、米オルタナチャートに初めてランクインし、第7位を獲得した。
1979 (1995)
『メロンコリーそして終りのない悲しみ』からのシングルで、全米12位と、彼らの最高位となった代表曲だ。
轟音ギターが封印された、シンプルで乾いたサウンドが新鮮だった。わたしはこの曲がヒットした時に「ああ、もうグランジブームは終わったんだな」と、ロックシーンの移り変わりを実感したものだった。
ZERO (1995)
『メロンコリーそして終りのない悲しみ』からのシングル。うねるようなギターリフとスマパンらしい一体感を感じるグルーヴが超カッコイイ。
このPVのダーシーの、またいつもと違うゴスロリみたいな美しさもたまらない。
ビリーはなぜか髪の毛もゼロに。
Bury me
1stアルバム『ギッシュ』で完成させた、スマパン・グルーヴによる最高傑作。
わたしは1stではこの曲が1番好きだ。最初聴いたときは衝撃的だったな。
1992年のレディング・フェスティヴァルでこの曲を演奏した映像が残されていて、今でもたぶんYouTubeで見れるだろう。あまりの熱演にビリーのギターの弦が切れて間奏の間に交換する場面もあったが、わたしがこれまで見たスマパンの映像の中では最高のカッコ良さだと思う。
Today
『サイアミーズ・ドリーム』からのシングルで、米オルタナチャートで4位まで上昇した、彼らのブレイク作だ。
この光が明滅するような美しい響きのイントロ4小節を聴いただけで、一気に幸福だった1993年に連れ戻される。
なんて、当時はちっとも幸福だとは思っていなかっただろうけど、過ぎ去りし日々はなんだって幸福に思えてしまうものだ。
「今日は今までで最高の日。でも長くは続かないかもしれない。心が粉々になってしまうかもしれない」と歌う、あの頃のわたしの心にも響く歌だった。
(Goro)