
なにしろ60年以上にも及ぶ歴史があるローリング・ストーンズなので、何から聴いていいかわからないという若人たちも多いに違いない。
実際、入り口はいくつかあって、60年代のヒット曲を集めたベスト盤もあれば、キャリアを俯瞰したベスト盤もある。
ベスト盤では慊いなら、リリースされたばかりの最新アルバム『フォーリン・タングス』から入って遡っていくという手もあれば、逆に1stアルバムから順に聴いていくという入り方だってある。
どれでも好きな入り方でいいと思うけれども、わたしがお奨めするとすれば、いわゆる「ストーンズの黄金期」と呼ばれる1968年〜72年のアルバム群の名曲からいきなり入る入門の仕方だ。
まさにストーンズが世界最強だった時代、ミックとキースのソングライティングの才能の泉が溢れんばかりだった時代、怖いものなしのやりたい放題だった時代である。天才ギタリスト、ミック・テイラーがいた時代でもある。
そんなストーンズの黄金時代から、入門用に最適な10曲を選んでみた。これからストーンズを聴き始めようという方は、ぜひ聴いてみてほしいと思う。
Sympathy for the Devil (1968)
それまでずっとビートルズの後塵を拝していたストーンズが、ついにビートルズを超える作品をものにした(※個人の所見です)1968年の『ベガーズ・バンケット』の冒頭を飾る、ストーンズの代名詞とも言える名曲。
悪魔が乗り移ったかのようなミックの戦慄の歌声と、キースの切れ味の凄い一世一代のギター・ソロに悶絶してほしい。
Street Fighting Man (1968)
当時、世界中で巻き起こっていた反戦運動、反体制運動を背景にした、ストーンズ流のプロテスト・ソング。「眠ったような街で貧乏人のガキに出来ることなんて、ロックンロール・バンドで歌うことぐらい」という名フレーズによって、永遠のロック・アンセムとなった。
きったない音のギターで始まるイントロから衝撃的だが、この曲ではエレキギターは一切使われていない。アコギで弾いたものをカセットに録音し、それを大音量で再生したのだという。
Gimme Shelter (1969)
ベトナム戦争が激化していた時代に、戦火や暴力、レイプや殺人といった狂気の情景を凶々しく想起させるような、恐るべき名曲。参加した女性R&Bシンガー、メリー・クレイトンの絶叫の名唱は鳥肌もの。
Midnight Rambler (1969)
シカゴ・ブルースの影響の色濃い、7分近い大曲。60年代前半に起きたボストン絞殺魔事件をヒントに書かれ、ストーンズにしては珍しく、テンポやビートが何度も変わるため、キースはこの曲を「ブルース・オペラ」と呼んでいる。
全編でハーモニカが活躍しているが、吹いているのはブルース・ハープの名手でもあるミック・ジャガーだ。
Jumpin’ Jack Flash (1968)
1968年5月にシングルとしてリリースされて全英1位、全米3位の大ヒットとなった曲だが、ここでは1970年9月にリリースされたストーンズ初の公式ライヴ・アルバム『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』に収録されたバージョンで聴いてもらおう。
その後50年以上に渡って、ライヴ終盤のハイライトとして必ず演奏された正真正銘の代表曲だ。
Brown Sugar (1971)
新ギタリストとしてミック・テイラーが加入し、ローリング・ストーンズ・レーベルの第一弾作品としてリリースされた『スティッキー・フィンガーズ』は、それまでのアルバムとは一線を画す、時代が完全に変わったような新しさがあった。
この曲はアルバムを象徴する大ヒットシングルで、キースの独特のギターリフや猥雑な世界観など、最もストーンズらしい曲のひとつだ。
Wild Horses (1971)
ストーンズといえばブルースがその音楽性の基盤になっていることはよく知られているが、カントリーの影響が濃い名曲も数多く残している。この曲はその代表格。
Bitch (1971)
文句なしにカッコいいキースのリフに乗せて、口汚い言葉で、吐き捨て、罵るように歌うミック、そして最高のグルーヴを生み出すリズム隊と、これもまた何から何までストーンズらしい曲だ。
「ブラウン・シュガー」のシングルのB面にも収録されたけれども、今思うと最強のシングル盤だな。
Happy (1972)
ではこの辺で、「カッコいいロック・ギタリスト」のイメージを作り上げた男、キース・リチャーズがリード・ヴォーカルを取るこの曲を聴いてみよう。
この頃からストーンズのアルバムにはたいてい1曲か2曲はキースが歌う曲が収録されるようになった。別に上手くはないし、どっちかというと下手くそだけど、われわれストーンズ・ファンはキースが歌うのを楽しみにしているのも事実だ。
Tumbling Dice (1972)
1972年の名盤『メイン・ストリートのならず者』は、キースがフランスに所有していた大邸宅に録音機材を持ち込み、ストーンズのメンバーもゲスト・ミュージシャンもエンジニアもそしてプロデューサーまでもがドラッグ漬けになりながら録音された。
そんな最悪の環境で、急に思いついたように録音が始まるため、メンバーが揃っていないことも多く、この曲ではビル・ワイマンが不在でミック・テイラーがベースを弾いている。
このラフな演奏やテキトーな歌唱が、のびのびとしていて素晴らしいと思える人じゃないとストーンズを好きにはなれないだろう。
以上がわたしが選んだ、ストーンズ入門編の10曲だ。
この10曲のほとんどを気に入ってくれたら、きっと筋金入りのストーンズ・ファンになれる可能性を秘めている。あとはアルバムをテキトーに選んで聴いていくだけで、今後10年は退屈しないで過ごせると思う。
ひとつも気に入らなかったという人は残念。たぶん、そもそも体質的にストーンズが合わないと思われるので、今後は無理にストーンズを聴く必要もないだろうと思う次第である。
(Goro)