ディスコとパンクの時代にお蔵入りとなったカントリーとブルースたち【ストーンズの60年を聴き倒す】#47

女たち<デラックス・エディション>

『女たち〈デラックス・エディション〉』(2011)

“Some Girls”[Deluxe Edition](2011)

The Rolling Stones

2011年には『女たち』のアウトテイクから、12曲の未発表曲を追加収録したCD2枚組の〈デラックス・エディション〉が発売された。

Disc 2だけを単独で出したとしても、なかなかの好盤としてストーンズ・ファンには愛されたと思う。それぐらい充実した内容だ。

Disc 2の収録曲は以下の通り。

 1. クロディーヌ Claudine
 2. ソー・ヤング So Young
 3. ドゥー・ユー・シンク・アイ・リアリー・ケア Do You Think I Really Care?
 4. ホエン・ユーアー・ゴーン When You’re Gone (ロン・ウッド作)
 5. ノー・スペア・パーツ No Spare Parts 
 6. ドント・ビー・ア・ストレンジャー Don’t Be a Stranger
 7. ウィ・ハド・イット・オール We Had It All (ウェイロン・ジェニングスのカバー)
 8. タラハシー・ラッシー Tallahassee Lassie (フレディ・キャノンのカバー)
 9. アイ・ラヴ・ユー・トゥー・マッチ I Love You Too Much
10. キープ・アップ・ブルース Keep Up Blues
11. ユー・ウィン・アゲイン You Win Again (ハンク・ウィリアムスのカバー)
12. ペトロール・ブルース Petrol Blues
13. ソー・ヤング(ピアノ・ヴァージョン)So Young (日本盤のみ)

1はフランス人歌手クロディーヌ・ロンジェが76年に同棲相手のプロスキー選手を射殺(本人は銃の暴発と主張)した事件を歌ったカントリー・ロックンロールだ。
『女たち』から「法的な問題によって」収録は見送られ、懲りずに次の『エモーショナル・レスキュー』にねじ込もうとしたもののやはり内容に問題ありとしてアトランティック・レコードと揉め、アルバムのリリースが半年遅れたという逸話がある。結局、収録には至らなかった。

Claudine

2はストーンズらしいブルース・ロック。
3は「デッド・フラワーズ」的なカントリー・ロックの佳曲、
4はロン・ウッドの作。
5もカントリー・タッチの悪くない曲。
6はカリプソ風。
7はキースが歌うウェイロン・ジェニングスのシビれるカバー。
8は1959年にヒットしたフレディ・キャノンによるロックンロール。リトル・リチャードみたいなカッコいい曲だ。
9は『女たち』本編のサウンドに最も近く、レコードの溝にもっと余裕があれば収録されていたかもしれないと思わせる。
10はタイトル通りの、どブルース。ミックのハーモニカも入る。
11はハンク・ウィリアムスの名曲の素晴らしいカバー。
12はブルースで、デモみたいな断片だ。

↓ ストーンズ流カントリー・ロックの佳曲「ドゥー・ユー・シンク・アイ・リアリー・ケア」

Do You Think I Really Care

驚いたのはカントリー・スタイルの楽曲が5曲も入っていることだろう。もしかしたらカントリーを中心としたアルバムを作ろうとしたのかもしれない。なぜこの時期にカントリー・スタイルの曲を多く録音したのかはわからないけれども、しかし結局本編で採用されたのは「ファーラウェイ・アイズ」のみで、あとはごっそりボツにされたということになる。ディスコやパンクの時代にまさかカントリー・アルバムを出すわけにはいかなかったのは理解できるが、ストーンズのカントリー・アルバムというのも聴いてみたかった気がする。

わたしが特に気に入っているのはキースが歌う7と、カントリー・ロック風の3、そしてハンク・ウィリアムスのカバー、11だ。
カントリーばっかりだけど、ストーンズはブルースはもちろん良いけれど、カントリーもなかなか味があって、わたしは好きなのだ。

↓ キースが歌うウェイロン・ジェニングスのカバー「ウィ・ハド・イット・オール」

We Had It All

(Goro)