「リヴィング・イン・ア・ゴーストタウン」 (2020)
The Rolling Stones
2012年の「ドゥーム・アンド・グルーム」以来、8年ぶりとなった新曲だ。
「おれたちはみんな、ゴーストタウンに住んでいる」と歌う曲で、当時の新型コロナ禍によってロックダウンや外出禁止を余儀なくされた世界を想起させるような内容だ。
歌詞には他にも「われわれはすべてロックダウンされてしまった」「失うものはあまりに多くの時間」「パーティーをしたいならひとりのパーティー」などなど、まさに世界の閉塞状況を憂う歌詞になっている。「ウォオウ、ウォオ~」のコーラスのリフレインも印象的な、横ノリのグルーヴに支えられたシリアスなテイストの曲だ。
ビデオ・クリップには人影のない、世界の街が映し出される。大阪や東京らしき映像もある。
実のところは、コロナ禍よりも前からニュー・アルバムのためにレコーディングを進めていた楽曲群のひとつで、キースによれば「こういう事態になって、ミックと『あの曲を早く仕上げて出そう』ということになった」と言う。
ミックは「ロックダウンの前に、ストーンズはスタジオで新曲をレコーディングしていた。その中に、いま現在の状況に共鳴するような曲があったんだ。だから、それぞれが個別に作業してこの曲を仕上げた」と語っている。
それにしてもミック・ジャガーの元気な歌声は相変わらずだな。
時折、30代の頃と変わらないような若々しい声が出てきたりもして、ハッとさせられる。間奏のハーモニカも嬉しい。ミックはリトル・ウォルターが大好きらしく、少なからず影響を受けているのだろうけれども、今やもう、その師匠を超えてしまった。
キースは年々手数が少なくなっていくけど、それでも彼のギターの音が後ろで鳴っていれば、それがもうストーンズ・サウンドなのだ。老舗の名店の味である。
さて、ストーンズにとって現在のところ最新の楽曲であるこの曲(それでも3年前なのか。。)をもちまして、半年のあいだ続けてきた【ストーンズの60年を聴き倒す】の連載は今回で一旦終了となります。
次回は、ポール・マッカートニーが参加しただのビル・ワイマンも参加しただのといった噂も聞く、現在レコーディング中と伝えられる十数年ぶりのオリジナル・アルバムについて書けたら良いなと思います。80歳となったミックとキースがいったいどんな音楽を奏でるのか、色んな意味で興味があります。
ではまた、その日まで。
(Goro)