『ストリップド』(1995)
The Rolling Stones
90年代前半に流行したMTVのアンプラグドというシリーズは、人気アーティストたちが自らの代表曲やカバー・ソングを、椅子に座り、客席も近い親密な雰囲気の中で、アコースティック・アレンジで披露するという企画で人気を博し、それをCD化したライヴ・アルバムが商業的に大きな成功を収めたりしたものだ。
ストーンズにもMTVからオファーがあったのかどうかはわからないが、ストーンズもその流行に乗っかって、独自に制作したのが本作だ。キースによれば「自分たちで作ればMTVに分け前を払う必要がないから」ということらしい。だからタイトルも「アンプラグド」を使わず「ストリップド」となったのだろう。
ただし、全部がアコースティック楽器で演奏されているわけではなく、エレキギターやエレキベースが入っていたりもする。
内容は、ヴードゥー・ラウンジ・ツアーのアコースティック・セットから収録したものや、アムステルダムやロンドンの小さめのライヴ会場で収録されたもの、ポルトガルのスタジオで録音されたもの、そして95年に来日した際に東京の東芝EMIスタジオで録音したものなどが混在している。東京で録音されたものは「クモとハエ」「ワイルド・ホース」「スリッピング・アウェイ」「むなしき愛」「リトル・ベイビー」の5曲だ。
- ストリート・ファイティング・マン – Street Fighting Man
- ライク・ア・ローリング・ストーン – Like A Rolling Stone
- ノット・フェイド・アウェイ – Not Fade Away
- ライトを照らせ – Shine A Light
- クモとハエ – The Spider And The Fly
- アイム・フリー – I’m Free
- ワイルド・ホース – Wild Horses
- レット・イット・ブリード – Let It Bleed
- デッド・フラワーズ – Dead Flowers
- スリッピング・アウェイ – Slipping Away
- 悲しみのアンジー – Angie
- むなしき愛 – Love In Vain
- スウィート・ヴァージニア – Sweet Virginia
- リトル・ベイビー – Little Baby
- 黒いリムジン – Black Limousine
本作の一番の目玉はなんと言ってもボブ・ディランの大名曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」のカバーだろう。これはシングル・カットもされ、全英12位、米メインストリームロックチャート16位のヒットとなった。
ストーンズのことだからきっとラフでテキトーな感じのカバーだろうなと思って聴いてみたら、すごくしっかりとやっていたので驚いたものだ。ボブ・ディランのオリジナルのイメージを壊さずしかも新鮮に聴ける素晴らしいカバーだ。そういえばそもそもストーンズって、その初期からカバーがものすごく上手いバンドだったなとあらためて思い出したほどだった。
国内盤には「黒いリムジン」がボーナス・トラックとして追加されているが、これは「ライク・ア・ローリング・ストーン」のシングルにカップリングされていたものだ。
アルバムは全米9位、全英9位、オリコン12位と、コアなファン向けの内容にしては悪くない成績だったと思う。
わたしの好きな曲がやたらと多い選曲が嬉しい。好きなアルバムだ。
(Goro)