SOPHIA/ビューティフル (1999)

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【ニッポンの名曲】
SOPHIA – ビューティフル (1999)

作詞・作曲:松岡充 編曲:SOPHIA

古今東西のロックで、「これはわたしのことを歌っているのではないか」という疑いがある歌はたぶん1,000曲以上にも及ぶが、しかしこの曲は「確実にこのわたしのことを歌っている!」という確信があり、初めて聴いた時は驚愕したものだ。

SOPHIAの9枚目のシングルとして発表され、オリコンチャート4位のヒットとなった。

日本のメジャー系ロック・バンド、とくに「ヴィジュアル系」と括られるバンドがわたしはお化けよりも宿題よりも苦手だったけれども、このSOPHIAには前作のシングル「黒いブーツ」あたりから興味を惹かれていた。

当時わたしは32歳で、再就職して1年が過ぎ、順調に昇進して、順調に給料も上がり、誰に言われたわけでもなく、だれのためというわけでもないのに、仕事に猛烈に打ち込んでいた。

それまでの、明日をも知れない迷走期に比べれば、毎月安定した給料が振り込まれ、安心してメシが食えるだけでも涙が出るほどありがたかったし、薄ぼんやりと幸福を感じ始めてはいたものの、ただ同時に「この道はどこへ続く道なんだろう?」という不安がゆっくりと鎌首をもたげてもきていた。

青春ももう終わったし、結局大したもんにはなれんかったなあと、社会のはじっこのほうでささやかな日常を送っていることに、自信過剰な若者特有の「敗北感」を感じていたのかもしれない。

そんなわたしの、すっかり萎んだ胸に、この曲がブッ刺さってきたのだった。

「やべ、オレのことを歌ってんじゃん!」

そんなふうにこの曲に、聴き入ったものだ。

2番のサビの前で、まるで決め台詞のように言う「ロックは詳しいぜ!」という、「だからどうした」としかいいようのない、そんなことがなんの役にも立たないことがさすがにわかってきていながら、そんなことしか自慢するものがない虚しさが、このわたしそのものだと思った。

愛しのBabyはいるのさ
だけどVery気を使うよ

理想的なDaddyになるのさ
危ないクスリもケンカもしたことないよ

「ROCKは詳しいぜ!」

過ぎたことばかりがなぜ眩しく見えるのかな
あの頃よりも少しは大人だろう?

死にたくなるほど嫌なことなんてひとつもないぜ
だから今日も空っぽで日が暮れる

冷たい部屋のベットでひとり 訳もなく泣けた夜
心の中身を少しだけ捨てた

永久未来続くものなどあるはずはないから
これで行くさ 僕は僕を壊してく

(作詞・作曲:松岡充)

この2年後、わたしの結婚式の二次会で、わたしはこの歌をカラオケで歌った。案の定、友人たちに「おまえの歌か!」と言われ、大笑いされた。

今でもこの曲を聴くと、喉の奥に玉のようなものが詰まって、いくら飲み込んでも落ちていかない、そんな気分になる。

そしてあの時、どこへ続いていくのかと不安に思っていた「この道」は、今ここへ辿り着いているのだ。

「あのとき、こうしていれば」「あのとき、べつの道を選んでいれば」などと考えることはしょっちゅうだけれども、しかしたとえばタイムマシンで過去に戻って過去の自分に別の道を行くよう勧めたら、その瞬間から、その後に続く未来、つまり現在のわたしの生活も仕事も家族も犬も、ガラリと書き換えられてしまうのである。

どんなに豊かで幸福な生活が得られようと、今ある大事なものが消えてしまうことを考えると、結局「来た道」はひとつも変えることができないんだなということに落ち着くのである。

(Goro)