ボストン/宇宙の彼方へ (1976)

Boston ボストン / More Than A Feeling 宇宙の彼方へ (7") - DISK-MARKET

【70年代ロックの名曲】
Boston
More Than a Feeling (1976)

米マサチューセッツ州ボストン市出身のバンド、ボストンの1stアルバム『幻想飛行(Boston)』からのシングルで、全米5位の大ヒットとなった。

ボストンの音楽は日本でも大人気だったが、なぜか彼らの音楽はわたしの心の横っちょを風のように通り過ぎて行き、わたしの人生にはなんの影響も及ぼさなかった。

そもそもボストンというバンドが先にあったわけではなくて、トム・ショルツという人が自宅で1人で作った音源がCBSに認められ、それをボストンという架空のバンド名義の作品ということにしたのだった。

1stアルバム『幻想飛行』は、ヴォーカルのブラッド・デルプ以外の演奏はすべてトム・ショルツによるもので、バンドのメンバーはアルバムの発表後に、ライブ活動のためにオーディションで集められた。それでようやくボストンは実在のバンドとなったのだった。

どうやら天才らしいトム・ショルツという男は、マサチューセッツ工科大学の出身で、自宅のスタジオも自分で構築したらしい。

そういうことか。

音楽性の好み以前に、わたしとは偏差値も住む世界も違いすぎるのだ。

日本でもボストンが大人気だった昭和50年代は当時「1億総中流時代」と呼ばれ、人々の生活も豊かだった。でもわたしは、そんな豊かな時代に運悪く母子家庭の貧しい下流家庭で少年時代を送ることになり、母の内縁の男に四六時中ボコボコにされ、泣いたり気絶したりしていたのだ。

だからわたしには、トム・ショルツの壮大で華やかな工科大学的な音楽よりも、中学を退学処分になったジョン・ライドンや、公営住宅で父親から暴力を受けながら育ったギャラガー兄弟のような連中が創る音楽のほうに、より共感するのかもしれない。

トム・ショルツは、高度な技術によってロックからギザギザのケバを取り、耳あたりの良い新鮮なポップ・サウンドに加工して、爆発的に売れた。

さすがだ。
やっぱりちゃんとした学校に通ったやつは金を生む術をよく知ってるのだ。
わたしは全然知らない。

しかし今あらためて聴いてみると、やはり懐かしさからか、結構楽しめたりもする。当時は興味を惹かれなかったり、好きになれなかったものでも、「懐かしい」というフィルターがかかれば、たいていのものは楽しめるものである。「産業ロック」などと揶揄されたり、賛否両論のあったボストンだが、今となってはただの古いロックに過ぎないのである。

ボストンのような質感のロックは90年代以降は絶滅してしまった感があるので、今の若い人には逆に新鮮に響く可能性もある。特に高学歴・高収入を目指そうとしている立派な若者たちには、共感するものもあるのかもしれないので、一応紹介しておく。高学歴向きのロックだって、あったっていいのである。

Boston – More Than a Feeling (Official HD Video)

(Goro)