1958
東京タワーが完成し、フラフープが大流行したこの年、ロックンロールの象徴的名曲として知られるチャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」や、彼にとってチャート最高位を記録した名曲「スウィート・リトル・シックスティーン」が大ヒットした。
チャックは絶好調だし、コクランやホリーの筆も冴え渡り、後世に聴き継がれることになるロックンロールのスタンダード・ナンバーも多く生まれたが、しかしこの年は、年明け早々からこのロックンロール黄金時代に影を落とす出来事が続けざまに起こる。
まず、リトル・リチャードが突然の引退を発表した。
彼はオーストラリアに向かう飛行機の中で翼のエンジンから火が出ているのを見て、「命をお助けくだされば神の僕となることを誓います」と祈り、無事生還すると、神学を学んで牧師になるためにアラバマ州のオークウッド大学に入学したのだ。
この時に何か感じ取ったらしいリトル・リチャードは「ロックンロールは悪魔の音楽だ」と言って距離を置いたという(後に復帰するが)。
さらに、エルヴィス・プレスリーが徴兵通知を受け、合衆国陸軍に入隊し、芸能活動から離れることになった。
彼は徴兵期間の2年間をドイツで軍務に就いた。その間も未発表曲がシングルとして定期的にリリースされたが、しかしキングの不在の間にロックンロールの頭上には分厚い暗雲が垂れ込めて行く。
5月には、人気絶頂だったジェリー・リー・ルイスがイギリス・ツアーに出た折、彼が13歳のいとこと結婚していること(州法では合法だった)がイギリスのマスコミにスキャンダラスに報じられ、世間の批判を浴びてツアーは早々と打ち切られることになった。それをきっかけに彼の人気は凋落する。
栄華を誇った第一期ロックンロール黄金時代はここでピークを越え、翌年の決定的な出来事と共に急速に収束していく。
Chuck Berry – Johnny B. Goode
このシンプルなロックンロールは、今聴いても圧倒的に素晴らしい。
ギターはこの曲を弾くためにあるかのように音が輝いているし、ヴォーカルは当時の熱狂が伝わってくるほど生々しい。
60年前のロックンロールのシンボルは、少なくともわたしにとってはまったく色褪せずに輝きを放っている。
Chuck Berry – Sweet Little Sixteen
「ボストンでもフィラデルフィアでもテキサスでもサンフランシスコの海岸でもセントルイスやニューオリンズでも、可愛くてステキな16歳の女の子とみんな踊りたがってるんだ」と歌い、当時の全国的なロックンロール・ブームと若者たちの熱気が想像できる素敵な歌詞だ。全米2位と、チャック・ベリーにとってチャート最高位を記録した。わたしは彼の曲の中ではこの曲がいちばん好きだな。
Little Richard – Good Golly Miss Molly
全米10位の大ヒットとなった、リトル・リチャードの代表曲のひとつ。ジェリー・リー・ルイスやC.C.R.など、後に多くのカバーも生んだ。
「ミス・モリーとのダンスは最高だぜ!」と連呼する歌だけれど、ダンスと言い換えてるだけで性交渉のことを言ってる、実に野蛮で楽しい歌だ。
Eddie cochran – C’mon everybody
エディ・コクラン19歳のヒット曲。もう60年以上前の曲だけど、今聴いてもなんてカッコいいんだろう、と思う。このシンプルなメロディと清々しい響きに、あまりに余計なものが多いロックを聴きすぎて汚れたわたしの耳が洗われるようだ。
Eddie Cochran – summer time blues
クソ暑い夏だというのに、遊びに行くことも叶わず働き続ける若者の悲哀をユーモアを込めて歌った歌だ。ザ・フーやT.レックス、ブルー・チアーなど多くのカバーが存在する、エディ・コクランの代表曲であり、ロックのスタンダード・ナンバーでもある。全米8位、全英18位のヒットとなった。
Buddy Holly and the Crickets – It’s So Easy
全米チャートには入らなかったシングルだが、20年後にリンダ・ロンシュタットがカバーして大ヒットしたので、知っている人も多いだろう。文句なしにカッコいいサビが印象的だ。
Ritchie Valens – La Bamba
原曲はメキシコ民謡であり、メキシコ系アメリカ人のリッチー・ヴァレンスがロック調にアレンジしたもので、全米22位のヒットとなった。
1987年に公開されたリッチー・ヴァレンスの伝記映画『ラ★バンバ』は、数ある音楽伝記映画の中でも屈指の傑作だ。音楽を担当したロス・ロボスがまた素晴らしく、彼らの「ラ・バンバ」のカバーは全米1位を獲得する特大ヒットとなった。
The Everly Brothers – All I Have to Do Is Dream
「起きろよスージー」に続き、2作目の全米1位を獲得したシングル。情感豊かな美しいメロディのバラードで、わたしは彼らの曲の中では、この曲がいちばん好きだ。
Paul Anka – You Are My Destiny
16歳で書いた前年の「ダイアナ」も見事だったが、17歳にしてこの壮大なバラードはさすがに凄すぎる。やはり天才なのだろう。
2002年に日本のTVドラマ『ゴールデン・ボウル』の主題歌に使われてリバイバル・ヒットしたので、知っている人も多いかもしれない。
Cliff Richard – Move It
アメリカ以外の国で最初に生まれた本格的なロックンロールがこの曲だと言われている。
“イギリスのエルヴィス”とも呼ばれたクリフ・リチャードは、当時17歳、この曲がデビュー・シングルとなり、いきなり全英2位の大ヒットを記録した。バック・バンドのザ・シャドウズと共に、イギリスで最初のロックンロール・バンドとして君臨し、ヒット曲を連発した。
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(by goro)