⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
“Leningrad Cowboys Go America”
監督:アキ・カウリスマキ
出演:マッティ・ペロンパー、レニングラード・カウボーイズ
音楽:マウリ・スメン
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の、32歳のときの大傑作。
わたしはこの1作でカウリスマキ監督のファンになり、その後も彼の監督作品を追い続けたものだった。
大げさな芝居をせず、無表情で動きの少ない演技、説明的なセリフや映像を排し、引きの映像と長い間による笑いなど、まさにハリウッド映画のすべて逆を行くような方法論の、当時は革命的な作品だった。
尖ったリーゼントと尖った靴という見た目が特徴的なシベリアのバンド、レニングラード・カウボーイズが、独裁的なマネージャーに引率されて売れるためにアメリカへ渡り、極貧の旅を強いられ、様々なトラブルに見舞われながらメキシコにたどり着くというロード・ムーヴィー。爆笑の連続である。
最初はロシアのポルカなどを演奏していたのが、アメリカで売れるためにロックンロールを覚えたり、演奏会場の地域性に合わせてカントリーを演奏したり、ステッペンウルフの「ワイルドで行こう」を演奏したりと、ロック・バンドとして成長していく様も楽しい。
この作品に中古車ディーラーの役で出演しているジム・ジャームッシュもカウリスマキ監督と作風に共通するものがあるけれど、日本では初期の北野武監督の作風がこれにそっくりだった。
北野監督の初監督作『その男、凶暴につき』が公開されたのが、『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』の日本公開の1か月後である。
フィンランドと日本という遠く離れた国から、この2人が奇しくも同時期に出て来たというのは、時代の要請だったとしか思えないものがある。
(Goro)