ザ・ローリング・ストーンズ/愚か者の涙(1976)

ブラック・アンド・ブルー

ザ・ローリング・ストーンズ
【100グレイテスト・ソングス】#57
The Rolling Stones – Fool To Cry

夜中じゅう仕事をして帰ってきて、幼い娘を膝の上に抱いて泣く男。
その娘が「どうして泣くの? 私にはわかんない。泣くなんてバカよ」と言う。
その男は街に女を作っていて、その女にもやはり同じことを言われる。「あんた、泣くなんて、馬鹿よ。なんで泣くの? わからないわ」
そんな「愚か者」を歌った歌だ。

人間の業や愚かさ、単純な善悪だけの話では語りきれないことを、ほんの少しの情景描写だけで伝える深い味わいのある歌詞だ。

感動して思わず涙があふれたことを除けば、成人してからわたしが泣いたのは1度だけだ。
つい2年前のこと。20年間勤めてきた仕事をある日突然失ったわたしはその夜、憤りを押さえながら家族には心配をかけぬよう、冷静に伝えようとした。
しかし娘の肩に手を置いて「すまない、これからは今までみたいには…」と言いかけたときに、自分でも驚くほど、突然声が震えだし、涙が溢れて止められなくなった。
号泣する情けない父親の姿を初めて見た娘は、きっとショックを受けたに違いない。
15歳の娘は、そんなときに必要な語彙などまだ持っていないのに、わたしの肩に手を置き、「難しいことはわからないけど、きっとなんとかなるよ」と言ってくれた。

わたしはよく、今までの人生が間違いだらけだったような気がして、絶望的な気分になる。
でも、過去に別の選択をしていたら、違う人生を送っていたら、この娘が生まれなかったのかもしれない、と思うと、やっぱりひとつも間違っていなかったのだろう、と納得するのだ。

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