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AC/DC
“Back In Black” (1980)
なんてったって、史上2番目に売れたアルバムである。2023年までに5,000万枚以上とされている。(※注→集計の仕方などで諸説あり。ここではwikiの記事を参照しました→最も売れたアルバム一覧)
1位はマイケル様の『スリラー』がダブルスコアで1億枚以上だが、これはもう化け物みたいなというか、実際に化け物も踊っているようなダンス・ミュージックなので、ロック・アルバムでは本作が史上最も売れたアルバムなのである。
それにしても、痛快である。
マイケル様やビートルズ様ほど有名でもなく、決して万人向けでもなく、商業主義的でもない、オーストラリアというド田舎から出てきた野人みたいな連中がやってる品位のかけらもないような騒々しい音楽が、全世界で愛されているのである。もしもテレビのクイズ番組で『スリラー』の次に売れたアルバムは?という問題が出たら、東大王でも答えられないかもしれない。
本作の制作直前に、バンドのヴォーカリストだったボン・スコットが急死したことはよく知られている。急性アルコール中毒で、享年33歳という若さだった。
バンドは解散を考えたが、スコットの遺族の説得もあって、続けることにしたという。生前のスコットが「ロックンロールの真髄を知っている男」と絶賛していたヴォーカリスト、ジョーディというバンドにいたブライアン・ジョンソンを新ヴォーカリストに迎えて、本作の制作をスタートさせた。曲はヤング兄弟とジョンソンの三人で全曲を書いている。
本作は1980年7月にリリースされ、全豪1位、全英1位、全米4位など、世界中のチャート上位を席巻した。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 地獄の鐘の音
2 スリルに一撃
3 危険なハニー
4 ロックン・ロール・ハリケーン
5 欲望の天使
SIDE B
1 バック・イン・ブラック
2 狂った夜
3 死ぬまで飲もうぜ
4 シェイク・レグ
5 ノイズ・ポルーション
真っ黒のジャケットは、ボン・スコットへの追悼の意を込めたものだという。
冒頭から重厚な鐘の音が鳴り響き(特注で1トンのブロンズ製の鐘を造ったらしい)、いかにも陰鬱な様子で始まるものの、その後は辛気臭さなどカケラもない、いつものハード・ロックンロールへと雪崩れ込んでいく。
ヤング兄弟の一心同体のツインギターとタイトなリズム隊が、堅牢なAC/DCサウンドを創り出し、新ヴォーカリストとなったブライアン・ジョンソンの獣のような雄叫びによってさらにヒート・アップしていく。余計なものが一切ない、熱々のハード・ロックだ。思わず「原始人がやりそうなハード・ロック」と言いそうになるのを、我慢している。
アンガス・ヤングは次のように語っている。「陰鬱なアルバムにはしたくなかった。ボンはそんなの望んでない。パワフルでなきゃ意味がないんだ」(米ギター・ワールド誌インタビュー 2001年)。もちろん、ファンだって望んでいない。
「地獄の鐘の音」のギター・リフはAC/DCの中でも最も好きなもののひとつだ。これが始まると尻がムズムズしてきて、居ても立ってもいられないような気分になってくる。他にも「バック・イン・ブラック」や「狂った夜」、「スリルに一撃」「死ぬまで飲もうぜ」など、AC/DCの名曲・代表曲が目白押しのアルバムである。
ふだんはそんなこと決してしないわたしが、やっぱりいつの間にかヘッドバンキングを始めてしまっている。
↓ オープニングを飾る「地獄の鐘の音」。ボン・スコットの死を悼む意味も込められていると思うのだけれども、決して「天国」じゃないのが彼ららしい。
↓ シングル・カットされた「狂った夜」。全米35位と、始めて全米チャート入りした曲。アメリカで人気が高い。
(Goro)