Spiritualized
“Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space” (1997)
スピリチュアライズド(精神を高める)というバンド名やアルバムの邦題『宇宙遊泳』を見て思わず警戒してしまう人がいても不思議ではない。ついカルト宗教や、複雑難解なプログレを連想してしまうのである。わたしもそのひとりだ。
アルバムの原題を直訳すると『紳士淑女の皆様、我々は今、宇宙を漂っています』という、宇宙船の機内アナウンスのような感じだ。
その宇宙遊泳のような感覚と、ドラッグによるトリップの感覚をかけているらしいのだ。アルバム・ジャケットが薬のパッケージのようなデザインなのはそのためだ。
ドラッグによる高揚感や夢幻の感覚を音楽で表現したものであれば、まあロックでは伝統的にあるやつなので、とくに新しくもなければ、警戒する必要もない。いわゆる、サイケデリック・ロックである。

1997年頃のスピリチュアライズド
スピリチュアライズドは、ヴォーカル&ギターのジェイソン・ピアースを中心としたイギリスのバンドで、1990年にデビューした。本作は1997年6月にリリースされた、彼らの3rdアルバムである。
【オリジナルCD収録曲】
1 宇宙遊泳
2 カム・トゥゲザー
3 アイ・シンク・アイム・イン・ラヴ
4 オール・オブ・マイ・ソーツ
5 ステイ・ウィズ・ミー
6 エレクトリシティ
7 勇者の安息
8 孤高
9 ブロークン・ハート
10 神なき信仰
11 涼風
12 コップ・シュート・コップ
アルバムは彼らにとって初のトップ10入りを果たす、全英チャートの4位まで上昇するヒットとなった。
プログレッシヴな要素も多少あるが、70年代のスペース・ロックを想起させるような浮遊感もあり、ノイジーなシューゲイザー的要素もあるし、ゴスペルなんかの要素もあり、ずいぶん賑やかな宇宙遊泳だ。全体的にはコンセプト・アルバムのようにひとつながりの流れを感じる。思わず「90年代の『サージェント・ペパーズ』」などと言ってしまいたくなる。
電子楽器も使われているがサウンドはパワフルであり、バンドの肉体的なグルーヴが強く感じられる。ユーモアもあれば実験的な部分や狂乱の部分もあるけれども、決してわけのわからないようなものではなく、全体的に真摯なロック・アルバムである。
↓ シングル・カットされ全英27位まで上昇した「アイ・シンク・アイム・イン・ラヴ」。
↓ ホルンとストリングスのアレンジが泣かせる失恋ソングの極地「ブロークン・ハート」。作者のジェイソンと付き合っていた、メンバーでキーボード奏者のケイト・ラドリーが、本作の制作中にザ・ヴァーヴのリチャード・アシュクロフトと密かに結婚していたことが発覚した。それを想像しながら聴くとさらに胸が締め付けられて、泣けてきたりするのである。
(Goro)
