Ramones
Do You Remember Rock ‘N’ Roll Radio? (1980)
ラモーンズの数ある名曲の中でも最も好きな曲のひとつだ。
1980年2月にリリースされたラモーンズ5枚目のアルバム『エンド・オブ・ザ・センチュリー』の冒頭に収められた曲だ。
80年代のスタートという区切りのアルバムでラモーンズはフィル・スペクターをプロデュースに迎えた。前作の『ロード・トゥ・ルーイン』も全米103位と、ラモーンズはセールスの不調に悩んでいて、なにか今までと違うことをすべきだと考えたのだろう。
フィル・スペクターと言えば60年代にロネッツやクリスタルズのガールズ・ポップをプロデュースし、何重にもオーバーダビングしたり深いエコーをかける独特のサウンド「ウォール・オブ・サウンド(音の壁)」で有名になった鬼才だ。
ラモーンズは見た目とサウンドこそパンク・ロックそのものだが、もともとはサーフ・ミュージックやバブルガム・ポップで育ち、楽曲にも素晴らしいポップ・センスが垣間見える彼らの、言わば原点回帰的なチャレンジだったのかもしれない。
ラジオからいつもロックンロールが流れていた時代を憶えてるか?
あの大騒ぎ、最高の時代だった
ジェリー・リーやジョン・レノン、Tレックス
でも70年代も終わり、ひとつの時代が終わったんだ布団をかぶってひとりでラジオを聴いていた頃を憶えてる
でもロックが過去の遺物になる前におれたちは変わらなきゃいけない
最近はどの曲も同じように聴こえる
(written by Dee Dee Ramone, Johnny Ramone, Joey Ramone)
この歌詞は、同じように少年時代に布団に潜ってラジオを聴きながら歌謡曲やロックを知ったわたしにとって、いつ聴いても、というか年をとればとるほど、胸が熱くなる。
しかしこのパンク・ロックらしからぬ、オーバー・プロデュースのアルバムは賛否両論だった。
フィル・スペクターは金を湯水のように使い、異常なまでに時間をかけ、バンドに何度も何度も繰り返し演奏させた。それまで低予算で、あっという間に録音を終えてきたラモーンズは彼のやり方に反発したが、スペクターは拳銃を突きつけて彼らを脅し、従わせたという。
結果的にアルバムは彼らの全キャリア中最高のセールス(全米44位)を記録し、この名曲「ロックンロール・レディオ」が誕生したのだから、まあ成功だったと言えるだろう。この曲も、フィル・スペクターでなければこんなにカッコいい仕上がりにはならなかったはずだからだ。
(Goro)