米ミシガン州デトロイトで結成された5人組のコーラス・グループ、ザ・テンプテーションズは、1961年に地元のモータウン・レコードからデビューした。
それから60年、ファンからは「テンプス」という愛称で親しまれ、メンバー・チェンジを繰り返しながらも5人編成の体制を維持し、一度も解散することなく、唯一のオリジナル・メンバー、オーティス・ウィリアムスをリーダーにして現在も活動を続けている。凄いことだ。
ハイテナー、テナー、バリトン、バスと担当を分け、曲によってリード・ヴォーカルが替わり、ダンスや見た目も重視したハイ・クオリティのコーラス・グループで、60年代にシュープリームスやミラクルズと共にモータウン王国を築き、ヒット・チャートを席巻した。
さらに彼らが凄いのはその後だ。
時代が変わり、ロック、サイケデリック、ニュー・ソウル、ファンク、ディスコとめまぐるしく音楽の流行が変化すれば、それらを貪欲に取り入れ、果敢にチャレンジして、様々なスタイルのヒット曲やアルバムを残した。
彼らの音楽性の変化はそのままソウルの歴史を見ているようで、実に興味深いものがある。
わたしは一時期このテンプスにハマっていた。男性コーラスグループでは今でもいちばん好きだ。
以下は、わたしが愛するテンプテーションズの至極の名曲ベストテンです。
The Way You Do the Things You Do (1964)
Songwriters : Smokey Robinson, Robert Rogers
1961年のデビューから3年の間は、7枚のシングルを出すもまったく売れず、テンプスは低迷した(このあたりはモータウンの同僚のシュープリームスと同じような状況だ)。
しかし、これ以降モータウンの屋台骨を支えることになる天才、スモーキー・ロビンソン作・プロデュースのこの曲で初のヒットを飛ばしてブレイクした。全米11位。R&Bチャート1位。
リード・ヴォーカルはファルセットのエディ・ケンドリックスだ。
Beauty Is Only Skin Deep (1966)
Songwriters : Norman Whitfield, Edward Holland Jr.
1964年に加入した、お世辞にもきれいな声とは言い難いのに妙に味のあるバリトン・ヴォイスのデヴィッド・ラフィンがリード・ヴォーカルを取るようになると、テンプスはヒットを連発する。この曲もラフィンのリードだ。
きれいじゃなくてもリアリティやパッションが感じられる声が求められるようになったのは、ロックやソウルの時代になったからだろう。
明るい曲調が人気を博して、全米3位。全英18位の大ヒットとなった。
Just My Imagination (1971)
Songwriters : Norman Whitfield, Barrett Strong
夢見るような浮遊感のあるサウンドが特徴の、片思いの心情を歌ったせつなくも美しいバラードだ。全米1位。全英8位の大ヒットとなった。
わたしはこの曲はローリング・ストーンズのカバーで先に知った。ストーンズのカバーもめちゃカッコいいぞ。
リードは前半がファルセットのエディ・ケンドリックス、後半はバリトンのポール・ウィリアムズだ。
Get Ready (1966)
Songwriter : Smokey Robinson
全米29位と、黄金時代の真っ最中にしてはなぜかチャートには嫌われたものの、スピード感のある、文句なしにカッコいい曲だ。
リード・ヴォーカルはファルセットのエディ・ケンドリックス。動画は作者のスモーキー・ロビンソンとの共演だ。
Ain’t Too Proud to Beg (1965)
Songwriters : Norman Whitfield, Eddie Holland
リード・ヴォーカルはバリトンのデヴィッド・ラフィン。
この曲もローリング・ストーンズがカバーしている。ストーンズは他に「マイ・ガール」もカバーしてるし、よほどテンプテーションズが好きらしい。おかげでわたしもテンプスを好きになったわけだけれども。
全米13位。全英21位。イギリスではこの曲が初めてのヒット曲となった。
Since I Lost My Baby (1965)
Songwriters : Smokey Robinson, Warren Moore
これも失恋の歌。リードは眼鏡のバリトン、デヴィッド・ラフィン。
日本では「ベビーは行っちゃった」というタイトルでシングルが発売された。この曲のせつないメロディーがすごく好きだ。さすがはスモーキー。
全米17位。R&Bチャート4位。
I Wish It Would Rain (1968)
Songwriters : Norman Whitfield, Barrett Strong, Rodger Penzabene
デヴィッド・ラフィンの情熱的なダミ声に耳が釘付けになり、中間のストリングスの間奏で心を揺さぶられる、失恋を歌った名曲だ。
全米4位、R&Bチャート1位。
Papa Was a Rollin’ Stone (1972)
Songwriters : Norman Whitfield, Barrett Strong
60年代のスタイルとはテーマもサウンドもガラリと変わった、社会派意識高い系のニュー・ソウルの影響がみられる刺激的な名曲だ。
若くして死んだ父親があまりに近所の評判が悪いことを気にし、母親に「パパはどんな人だったの?」と息子が訊くという歌詞である。
パパは生涯定職に就かず、詐欺師のように人から金をまきあげ、借金にまみれ、女と酒に溺れ、転がる石のような人生だった、と母親はありのままを説明する。そして、彼が帽子を置いた場所が我が家になり、母と息子に残したのは孤独だけだ、と嘆く。
何者にもなれず、妻と息子にもなにも残してやれずに死んでいった、どこにでもいるろくでなしの男について歌った、考えさせられる歌詞だ。
ニュー・ソウルやファンクの影響の濃いアレンジがまた衝撃的なカッコ良さで、全米1位の大ヒットとなった。
アルバム収録のフル・バージョンは12分近くあるが、以下は7分程度に編集したシングル・バージョン。
You’re My Everything (1967)
Songwriters : Norman Whitfield, Cornelius Grant, Roger Penzabene
ファルセットのエディがメインでリードを取り、バリトンのデヴィッドが部分的にリードを取った曲。全米6位、R&Bチャート3位の大ヒットとなった。
テンプスはストリングスのアレンジが印象的なものが多いけれども、この曲はその中でも特にストリングスの美しさが強く記憶に残る名曲だ。
My Girl (1964)
Songwriters : Smokey Robinson, Ronald White
初期メンバーのエルブリッジ・ブライアントの脱退に伴って新加入した、苦みの効いたバリトンのデヴィッド・ラフィンが初のリード・ヴォーカルを務めた曲で、テンプスにとって初の全米1位を獲得する大ヒットとなった。
テンプテーションズといえばこれ、と言われる代表曲であり、スモーキー・ロビンソンの代表作でもあり、モータウン・レコードのシンボルとも言える名曲だ。
素晴らしいメロディーと、クールなアレンジ、間奏のストリングスは何度聴いてもグッとくる。完璧なポップ・ソングだ。
以上、テンプテーションズ【名曲ベストテン】The Temptations Greatest 10 Songsでした。
(Goro)