⭐️⭐️⭐️
Little Walter
“Hate To See You Go” (1969)
常にピストルを持ち歩いていたというこの凶悪な面構えの男が、チェスレコードの看板アーティストとしてシングル・ヒットを連発していたのだから、凄い時代があったものである。
シカゴ・ブルース界随一のハーピスト兼シンガー、リトル・ウォルターの2ndアルバムである。
1958年リリースの1stアルバム『ベスト・オブ・リトル・ウォルター』は、1952年から55年までにリリースされたシングルを集めた内容のものだったが、本作はその11年ぶりとなる続編と言えるもので、1955年から60年までのシングルを集めたものだ。
バックのメンバーはどの曲もほぼ同じで、チェス・スタジオのお馴染みの名手たち、ギターがロバート・ロックウッド・ジュニア、ベースは名ソングライターでもあるウィリー・ディクソン、ドラムはフレッド・ベロウだ。
カッコ内は米R&Bシングルチャートの最高位。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ノーバディ・バット・ユー
2 マイ・ベイビーズ・スウィーター
3 ローラー・コースター(6位)
4 アズ・ロング・アズ・アイ・ハヴ・ユー
5 オー・ベイビー
6 テイク・ミー・バック
7 エヴリシングズ・ゴナ・ビー・オールライト(25位)
8 メロウ・ダウン・イージー
SIDE B
1 ヘイト・トゥ・シー・ユー・ゴー
2 アイ・ガット・トゥ・ファインド・マイ・ベイビー
3 エヴリバディ・ニーズ・サムバディ
4 ブルー・ミッドナイト
5 アイヴ・ハド・マイ・ファン
6 キー・トゥ・ザ・ハイウェイ(5位)
7 ブルー・アンド・ロンサム
B1とB7はローリング・ストーンズが2016年にリリースしたブルース・カバー・アルバム『ブルー&ロンサム』に収録されたことでも知られる代表曲だ。ちなみに『ブルー&ロンサム』は、収録曲の12曲中4曲がリトル・ウォルターの曲である。
1st『ベスト・オブ・リトル・ウォルター』と大きく音楽性は変わらないし、ヒット曲は圧倒的に前作のほうが多く収録されているのだけれども、わたしにはこちらのほうが音楽的には面白く思える。ウォルターの歌い方もバンドの演奏も、いかにもなブルースよりはややロック寄りに聴こえるのが、入っていきやすい理由かもしれない。
このリアルな音の感じ、このラフでアグレッシヴな雰囲気、そのカッコ良さ、どこか既視感を感じるなと思えば、なんのことはない、デビュー時代のローリング・ストーンズのあの感じである。
あらためてストーンズが、いかにリトル・ウォルターを敬愛していたかということがよくわかる。
↓ 1957年にシングル・リリースされた「ノーバディ・バット・ユー」でアルバムは幕を開ける。
↓ ストーンズのカバーでも知られる、「ヘイト・トゥ・シー・ユー・ゴー」。チェスレコードの同僚であるボ・ディドリー「ユー・ドント・ラヴ・ミー」の曲を借り、歌詞だけウォルターが書いたものに変えて歌っている。
(Goro)