エルモア・ジェイムズ『ザ・スカイ・イズ・クライング』(1965)【最強ロック名盤500】#100

Amazon.co.jp: Sky Is Crying [Analog]: ミュージック

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#100
Elmo James
“The Sky Is Crying” (1965)

エルモア・ジェイムズは、1918年にミシシッピ州ホームズ郡に生まれたブルースマンだ。

第二次大戦中は海軍に入隊し、機長に昇進して、当時日本が占領していたグアム島奪還作戦に参加した。

彼の豪快で背筋の伸びた歌声は、そんな鍛えられた男の雄々しさを感じる。

また、テレビの修理工の経験もある彼は、ギターやアンプにも自ら手を加えて改造を施していた。

そんな彼のギターの強烈な音色は、本作のオープニングのイントロを聴いただけで、これは特別なギターが聴ける1枚だなと興奮でゾワゾワさせられる。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 The Sky Is Crying
2 Dust My Broom
3 I Held My Baby
4 Fine Little Mama
5 Bobbie’s Rock
6 I Can’t Stop Lovin’ You

SIDE B

1 I Done Somebody Wrong
2 Rollin’ And Tumblin’
3 One Way Out
4 My Bleeding Heart
5 I’m Worried
6 Standing At The Crossroads

本作は、ニューヨークのレコード店経営者兼プロデューサーのボビー・ロビンスンがシカゴを訪れたおりに、タクシーの中から偶然見かけたライヴ告知のポスターがきっかけとなって生まれた。

そのポスターは手書きで書かれたもので、エルモア・ジェイムズがその晩にクラブに出演することを知らせていた。ロビンスンは急いでクラブへ駆け込み、幕間にエルモアを捕まえて、新曲を含むレコーディングの約束を取り付けた。

そして早速シカゴで録音されたのが本作のA1,2,3,5だった。
A1「The Sky Is Crying」は新曲で、1960年3月にシングル・リリースされると米R&Bチャート15位まで上がるヒットになった。エルモアの代表曲のひとつとなり、その後も多くのカバーを生み出すブルース・スタンダードとなった。

そしてエルモア・ジェイムズと言えば、その代名詞となっているほど有名なのがA2「ダスト・マイ・ブルーム」である。

「ダスト・マイ・ブルーム」はロバート・ジョンソンのカバーだが、エルモア名物の三連スライドのリフが炸裂しまくるアレンジで1952年にシングルでリリースされ、R&Bチャート9位の大ヒットとなった。

ギターももちろんカッコいいのだけど、わたしは彼の豪快な歌声も好きだ。
「アゲラッスウーーンネディモーニン、ンンンンンンンンンン」
という語尾のビブラートがたまらない。

よりによって友だちと浮気しやがった性悪女に怒り狂って「出て行ってやる!」と啖呵を切るものの、やっぱり出ていく決心がつかないという、哀愁漂うおっさんの歌である。

本作に収録されているバージョンはそのシカゴ・セッションのものだが、バックはこの曲でブレイクして以来のレギュラー・バンドで、当時のシカゴ・ブルースの最強バンドに数えられた、ブルームダスターズだ。このバンドのど迫力の演奏がまた素晴らしい。

シカゴ・セッション以外の8曲はニューヨークで録音されたものだが、シカゴ・ブルースの枠に収まらない、バラエティに富んだ楽曲やアレンジが楽しめる。もちろん、彼のトレード・マークの三連スライドはこれでもかというほどに出てくる。

エルモア・ジェイムズは1963年5月24日にシカゴで心臓発作によって、45歳で急逝した。
その年のアメリカン・フォーク・フェスティヴァルでヨーロッパ・ツアーを行う矢先のことだった。

意外にも生前の彼はシングルレコードしか残しておらず、LPとしてまとまった形でリリースされたのは、1965年にリリースされた本作が最初だった。本作は彼の最良の録音を収録したものと称賛されている。

ミシシッピ州エベネザーの教会墓地に埋葬された彼の墓石には、「KING OF THE SLIDE GUITAR」と彫られている。

↓ エルモア・ジェイムズの代名詞となった三連スライドが炸裂する代表曲「ダスト・マイ・ブルーム」。

Dust My Broom

↓ 本作のタイトル曲で、R&Bチャート15位のヒットとなった「ザ・スカイ・イズ・クライング」。

The Sky Is Crying

(Goro)

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