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Junior Wells’ Chicago Blues Band
“Hoodoo Man Blues” (1965)
米テネシー州メンフィス出身のハーモニカ奏者、ジュニア・ウェルズもまた、シカゴ・ブルースの最高学府、マディ・ウォーターズ・バンドの卒業生だ。リトル・ウォルターの後任として、17歳でバンドに加入した早熟の天才だった。
本作は彼が30歳のときにソロ・デビュー・アルバムとして、シカゴのデルマーク・レコードより1965年11月にリリースされた。彼の代表作として、最も有名な名盤である。
ここには先輩のリトル・ウォルターのデビュー・アルバムのようなヒット・ソングは1曲もないし、ラジオ向けにキャッチーなアレンジが施されたものもない。つまり、まったく非商業的な印象の作品である。
しかし、このアルバムには、ブルースの最も生々しく、鮮烈な一瞬が記録されている。
まるで家に居ながらにして、シカゴの紫煙に包まれたナイトスポットで、緊張感あふれる最高のステージを聴いている気分になれる。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 Snatch It Back and Hold It
2 Ships on the Ocean
3 Good Morning Schoolgirl
4 Hound Dog
5 In the Wee Wee Hours
6 Hey Lawdy Mama
SIDE B
1 Hoodoo Man Blues
2 Early in the Morning
3 We’re Ready
4 You Don’t Love Me,Baby
5 Chitlin Con Carne
6 Yonder Wall
もしもブルース・ハープ奏者やその歌に興味が持てない人でも、右のスピーカーから流れてくる、控えめな音量でチロチロと鳴っているエレキギターにはきっと耳を惹きつけられるだろう。ギタリストはその後、ウェルズの永遠の相棒となる、バディ・ガイだ。
ギター、ベース、ドラム、それぞれの音が独立してよく聴こえるようなスカスカ感がまたいい。ぜひ音量をグイッと上げて聴いてみてほしいと思う。ウェルズのハーモニカはディランのみたいに耳をつんざくような音色ではないので聴きやすいし、大きめの音で聴くと、バディ・ガイのギターの鋭いキレ味がより味わえる。
ヤードバーズがロックンロール風にアレンジしてヒットした「Good Morning Schoolgirl」もこの連中の手にかかると、激シブにクールなブルースにローダウンする。
一部の曲でギター・アンプが不調になったため、ハモンドオルガンのスピーカーに接続して録音したそうだが、B1「Hoodoo Man Blues」のことだろうか。トレモロみたいな効果のある変な音がサイケの先取りみたいだ。
初版のレコードのライナーにはジュニア・ウェルズの「おれはダーティなブルースしかやらない」という言葉が掲げられていたという。なんてカッコいい宣言だ。
全編、独特の張り詰めた音空間とファンキーでダーティな味わいに酔える、唯一無二のブルース・アルバムの傑作である。
ジャケットがまたカッコいいのよね。
↓ アルバムのオープニングを飾るファンキーな「Snatch It Back and Hold It」。
↓ ジュニアとバディのコンビ仲の良さが伝わってくるような「アーリー・イン・ザ・モーニング」。
(Goro)