歌手になりたかった19歳のマーサ・リーヴスは、日中は他の仕事をしながら、夜はデトロイトのクラブで歌っていた。あるとき、彼女の歌がモータウンのスタッフの目に留まり、彼女に名刺を渡した。
彼女は早速その名刺を持ってオーディションを受けるためにモータウンを訪れたが、曜日を間違えていたためにオーディションは受けられず、代わりに電話の応対をさせられた。高校の商業コースで学んだ彼女が電話の応対や事務仕事を上手くこなす姿を担当者が気に入り、急遽、秘書として雇われることとなった。
秘書として働きながらも彼女は虎視眈々とチャンスを狙い、デモテープの歌入れなどに積極的に協力し、デビューの機会を待ったという。2年後にその夢が叶ってマーサ&ザ・ヴァンデラスとしてレコード・デビューすると、2ndシングルのヒットをきっかけにヒットを連発し、一躍モータウンのスター・グループとなった。
同じモータウンのシュープリームスとはまさに対照的な、力強くダイナミックなマーサのヴォーカルが特長のグループだ。
ビートの効いたアップ・テンポの曲が多く、当時のブリティッシュ・ビート勢からも姐さんのようにリスペクトされ、数多くのカバー・ヒットも生まれた。
以下はわたしが愛する、マーサ&ザ・ヴァンデラスの至極の名曲5選です。
In My Lonely Room
全米44位とチャート・アクションは良くなかったが、好きな曲だ。作詞・作曲はシュープリームスの大ヒット曲を量産するなど、モータウンの黄金時代を支えた伝説のソングライター・チーム、ホーランド=ドジャー=ホーランドによるもので、若干シュープリームスっぽいと言えるかもしれない。
Jimmy Mack
これもホーランド=ドジャー=ホーランド作で、全米10位のヒットとなった。
他の男に言い寄られながらも元カレが忘れられない女性の歌だが「ジミー、あなたはいつになった帰ってくるの?」と歌う歌詞が当時のベトナムで闘う兵士たちには別の意味を伴って響いたという。
Come and Get These Memories
2ndシングルで、全米29位、R&Bチャート6位のヒットとなり、ヴァンデラスの初めてのヒット曲となった。作詞・作曲はホーランド=ドジャー=ホーランドだ。マーサの個性的な歌声が堪能できる。
Dancing in the Street
全米2位の大ヒットとなった、ヴァンデラスの最も有名な代表曲。マーヴィン・ゲイ、ウィリアム・ミッキー・スティーヴンソン、アイビー・ジョー・ハンターの3人による共作だ。
ヴァンデラスの本領がいかんなく発揮された、強いビートとパンチの効いたヴォーカルが魅力だ。ミック・ジャガーとデヴィッド・ボウイによる1985年発表のカバー・シングルが全米7位、全英1位の大ヒットとなった。
Heat Wave
全米4位の大ヒットとなった3rdシングル。これもホーランド=ドジャー=ホーランドの作品だ。ロック・ファンにはザ・フーやザ・ジャム、リンダ・ロンシュタッドなどのカバーによってよく知られた、ヴァンデラスの代表曲だ。
一般的には「ダンシング・イン・ザ・ストリート」のほうが有名で人気も高いと思うけれども、わたしは昔からこっちのほうが好きだったのだ。ザ・フーやザ・ジャムのカバーに親しんだせいかな。
以上、マーサ&ザ・ヴァンデラス【名曲ベスト5】でした。
(by goro)