Bob Dylan “Time Out of Mind”
ディラン56歳、通算30作目となるオリジナル・スタジオ・アルバムだ。
これがめちゃいい。
迷走の80年代に唯一輝きを放った1989年の傑作アルバム『オー・マーシー』でプロデュースを務めたダニエル・ラノワを8年ぶりに招集。全曲ディラン作というアルバムも『オー・マーシー』以来ということになる。
これが期待を大きく上回る出来栄えだ。間違いなく、90年代ディランの最高傑作だろう。
やはり凄いな、ラノワは。
ディランの声がカスカスになってきたのを逆手にとって、ディランの声に合うように調整されたサウンドが、ノスタルジックな面白さを含みながらも、時代に共鳴する新鮮なサウンドになっている。まさかこんなふうに解決するとは、とプロデューサーの手腕に驚かされた。
ディランの筆も力強く冴え、「ノット・ダーク・イェット」や「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」のような新たな名曲も生まれている。
久々の傑作アルバムとなった内容にリスナーも敏感に反応し、全米10位のヒットとなり、18年ぶりのトップ10入りを果たした。
グラミー賞では、最優秀アルバム賞、ベスト・コンテンポラリー・フォーク・アルバム賞、男性ロック・ボーカル賞を受賞した。
まさに、ディラン復活の狼煙と言える傑作アルバムだ。
↓ シングル・カットされた「ノット・ダーク・イェット」。
↓ アデルやビリー・ジョエルもカバーした「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」。