Bob Dylan “The Bootleg Series Vol. 4: Bob Dylan Live 1966, The ‘Royal Albert Hall’ Concert”
1966年5月17日、英マンチェスターのフリー・トレード・ホールでのライヴを収録した、ブートレッグ・シリーズの第4集だ。
会場が違うのになぜ「ロイヤル・アルバート・ホール」とタイトルが付いているのかというと、以前から流通していた有名なブートレッグが、この内容にこのタイトルを間違って付けていたからだ。
このブートレッグ・シリーズのコンセプトである「ブートレッグと同じ内容のものを公式にリリースして、ブートレッグを無価値にする」という目的から、タイトルも同じにしたのだそうだ。徹底してるな。
CD2枚組で発売され、ディスク1がライヴ前半で、ディランの弾き語り。ディスク2は、当時はホークスと名乗っていたザ・バンドがバックについてのロック・ステージとなっている。
66年の音源にしては驚くほど音質がいい。前半の弾き語りはクリアで、会場の緊張感も伝わってくるようだ。後半も迫力あるバンド・サウンドが聴ける。
このステージの映像の一部は、ディランのドキュメンタリー映画『ノー・ディレクション・ホーム』で見たことがある。映画のラストシーンだった。
ディランの音楽がフォークからロックへと変わっていくことが気に入らないらしい了見の狭い観客から「裏切り者!(Judas!)」「おまえの歌なんか二度と聴かない!」などとヤジが飛ぶと、ディランが「おまえのことなんか信じてない」「おまえはウソつきだ」と返す。
そしてザ・バンドに「思いっきりラウドにやろう」と声をかけ、「ライク・ア・ローリング・ストーン」を始めるのだ。
観客とのやりとりの部分はこのディスクには収録されていないが、ディランもザ・バンドも観客を挑発するかのように、思いっきり騒々しい「ライク・ア・ローリング・ストーン」を繰り広げている。
はい、ディランの勝ち。
↓ 映画『ノー・ディレクション・ホーム』より、ブーイングを浴びせる観客たちに対して挑発するかのような「ライク・ア・ローリング・ストーン」。もちろん、ディランのロック転向には、歓迎するファンのほうが圧倒的に多かったそうだ。