Bob Dylan “The Bootleg Series Vol.5 : Bob Dylan Live 1975, The Rolling Thunder Revue”
ブートレッグ・シリーズの第5集として公式発売された、1975年のツアーから選曲されたライヴ・アルバムだ。
このライヴ盤は、演奏は荒っぽいけれども、テンションは高いし、なにより雰囲気が素晴らしい。
ロックのライヴなんてものは、演奏の正確さや録音状態なんかより、テンションや雰囲気のほうが大事なのだ。
《ローリング・サンダー・レヴュー》と名付けられたこのときのツアーは、通常のツアーと違って、あらかじめ日程も会場も決まっておらず、大所帯のメンバーで気の向くままに旅をしながら、たどり着いた町で演奏できる場所を探し、ビラやポスターで集客するという、さすらいの旅一座みたいなやりかたで行われたツアーだった。どうもこれをディランはやりたかったらしいのだ。
ディランも元気いっぱいで気合入りまくりだ。なにより楽しそうなのがいい。わたしはこういうディランが大好きだ。
テンションあげまくりの「はげしい雨が降る」、そのポップな魅力にあらためて気づかされる「ハッティ・キャロルの寂しい死」、ジョーン・バエズとデュエットする「アイ・シャル・ビー・リリースト」なんかもなかなかいい。
原曲からはずいぶんと変わり果ててしまった曲も多いけれど、ここではそれがうまくハマって、とても楽しめるライヴ盤だ。
『欲望』に参加したメンバーが母体となっているので、ジプシー・ヴァイオリンのスカーレット・リヴェラもいて、彼女の情熱的な演奏に全体が鼓舞されているようにも感じる。
終盤の「オー・シスター」「ハリケーン」「コーヒーもう一杯」「サラ」と続く『欲望』メドレーはこのアルバムのハイライトだ。この旅一座にはこの情感に溢れた濃い目のメドレーがやはりよく似合う。
ジャケもカッコいいな。
ムーミン谷の、スナフキンみたいだ。
ちなみに、スナフキンはこんな名言を残しているのを知ってるかな。
「長い旅行に必要なのは大きなカバンじゃなく、口ずさめる一つの歌さ」
↓ 「はげしい雨が降る(A Hard Rain’s A-Gonna Fall)」。このツアーの時、ディランはこんなふうに道化師風のメイクをすることもあった。
↓ 「コーヒーもう一杯(One More Cup of Coffee)」