1992年、米国勢によるグランジ・ブームが世界を席巻し、英国ロックが停滞し始めた頃に救世主のように登場したのがスウェードだった。
ブレット・アンダーソンの中性的で妖艶なヴォーカルと、バーナード・バトラーのパンチ力と切れ味を備えたギターを中心にしたサウンドは、英国の王道ギター・ロックの待望の復活だった。
グラム・ロックを彷彿とさせる音楽性や、同性愛や近親相姦を想起させる刺激的な歌詞などから、当初からデヴィッド・ボウイと比較されることがよくあったが、わたしはどちらかというと彼らのキャッチーな音楽性や、ポップないかがわしさは、90年代のT.Rexだと思っていた。
彼らの登場が、その後のブリット・ポップ・ムーヴメントへの流れを作ったのは間違いないだろう。
以下は、わたしが愛するスウェードの至極の名曲ベストテンです。
Electricity
4thアルバム『ヘッド・ミュージック(Head Music)』のオープニング・トラック。シンセサイザーとディストーション・ギターが交じり合う近未来風のエレクトリカル・グルーヴィーな楽曲だ。全英5位のヒットとなった。
Everything Will Flow
4thアルバム『ヘッド・ミュージック』からのシングルで、全英24位。
シンプルで覚えやすい歌メロと、やや大仰ながらも気持の良いストリングスのアレンジが耳に残る。スウェードらしい、耽美ポップな佳曲。
Saturday Night
3rdアルバム『カミング・アップ(Coming Up)』からのシングルで、全英6位のヒットとなった。
当時17歳で加入した新ギタリスト、リチャード・オークスとブレット・アンダーソンの共作で、「この土曜の夜は、あの娘が喜ぶことならなんでもしよう。くだらないことでもいい。今夜僕らは出かけるんだ」と、仕事を終えた若者たちのデートというささやかな幸福を歌うバラード・ナンバーだ。なのになんかせつないのよねえ。
So Young
名盤1stアルバム『スウェード(Suede)』のオープニング・トラックで、もちろんアンダーソン&バトラーの最強コンビの作。
名盤というものは1曲目を聴いた段階でなんとなくピンとくるものだけど、これを聴いたときもまさにそれを感じたものだった。アルバムからの4枚目のシングル・カットとなり、全英22位となった。
Beautiful Ones
3rdアルバム『カミング・アップ(Coming Up)』からのシングルで、全英8位のヒットとなった。一度聴いたらサビのフレーズが耳から離れなくなる。
ブリット・ポップ・ブーム見事にに見事にハマって、アンセムとなった名曲。
Trash
名盤3rd『カミング・アップ(Coming Up)』のオープニング・トラック。淫靡ダーク・ワールドからよりポップな方向性へとシフトした新生スウェードを象徴する曲で、全英3位の大ヒットとなった。これも1度聴いたら忘れられないキャッチーな名曲。
PVのブレットも、どこか自信に満ち溢れているように、輝きを取り戻したように見える。
Stay Together
1stアルバムと2ndアルバムの間にリリースされた、アルバム未収録のシングル。全英3位と彼らにとって最高位のヒットとなった。
「一緒にいよう、壊れた愛でも」と歌っているものの、残念ながらこの曲の制作過程でブレットとバーナードの確執が決定的となり、バーナードはスウェードを脱退してしまう。
そんないわくつきだからなのか、2013年にスウェードの英公式フォーラムにおける「スウェードのワースト・ソングは?」というテーマでのファンたちの議論に、ブレット・アンダーソン本人が突然「Stay Together」と書き込み、それに対しファンが猛反論するという事件があった(笑)
書いた本人にはいろんな思いがあるのかもしれないけれども、スウェードの中でも特別な美しさを持つ曲のひとつであることは間違いないだろう。
Animal Nitrate
名盤1st『スウェード』からのシングルで、全英7位とスウェードにとって初のトップ10ヒットとなった。
崩壊した家庭で「吐き気を催すような笑顔の父親」から性的虐待を受け続けた少年という超ハードな内容ながら、攻撃的なギターと耽美的なヴォーカルという化学反応から生まれた糖衣に包んでキャッチーなポップ・ソングにしてしまうのが彼らの変態的な得意技だったのだ。
Metal Mickey
バーナードのパワフルでキレの良いギターにシビれる、スウェードの2ndシングル。まるでT.Rexみたいにわかりやすくて艶っぽくてカッコいい、まさに英国伝統芸能が復活した感じのポップ・ソングだった。当時はこんな大サービスのロックをしてくれるバンドなんて他にいなかったのだ。
The Drowners
スウェードの記念すべきデビュー・シングル。全英49位とチャート・アクションは目立たなかったものの、当時のシーンに与えたインパクトは計り知れないものがあった。わたしもイントロを聴いた瞬間に「おおっ!」と思わず立ち上がってしまったような記憶がある。新時代の幕開けを象徴するような、エポック・メイキングな名曲だった。
入門用にスウェードのアルバムを最初に聴くなら、2011年に発売されたベスト盤『ザ・ベスト・オブ・スウェード』がお薦め。今回選んだ10曲もすべて収録されています。
(by goro)