さようなら、チャーリー・ワッツ

Get Yer Ya Ya's Out (Dsd) [12 inch Analog]

ついに来るべき時が来たという感じだ。

21歳のときにオリジナル・メンバーとして参加し、以来59年間、ストーンズのドラマーであり続けたチャーリー・ワッツが、昨日、天国へと旅立ってしまった。

チャーリーのドラムはストーンズの音楽の核みたいなものだ。正直、これでストーンズは長い歴史を終えたのだなとわたしは感じている。

秋からストーンズのツアーが予定されているそうで、もともと病気療養中のチャーリーは参加しないことになっていて、すでに代役のドラマーも決まっているようだ。バンドに新たな化学反応が生まれるかもしれないし、観客にも受け入れられるかもしれない。

しかし、どうかな。わたしはあまりそれを聴いてみたいとは思わない。

1978年にザ・フーがキース・ムーンを失った後、それ以降のザ・フーの音楽はわたしには一度としてザ・フーに聴こえたことがなかった。まるで別のバンドがザ・フーの曲を演奏しているみたいに聴こえた。

チャーリーを失ったストーンズにもきっと同じことを感じるだろうと思うのだ。
ミックが歌い、キースが弾いているのに、あきらかにストーンズではないという音を聴くのはきっと哀しいだろうな、と思う。この訃報のリアルな衝撃を、あらためて重く感じることになるのかもしれない。

でもチャーリーはキース・ムーンよりもずっと長生きしてくれた。享年80歳だ。
永遠のお別れは寂しいけれども、しかしこの偉大な唯一無比のドラマーが、死ぬまでローリング・ストーンズのメンバーだったことの幸福を、今あらためて噛みしめている。

さようなら、チャーリー・ワッツ。
彼は無口で物静かな英国紳士であり、家庭をなによりも愛し、腕利きのジャズ・ドラマーでもあった。ストーンズのイメージとはひとりだけかけ離れていたけれど、しかし彼が叩くドラムは、ときに激しく、ときにはつんのめるほど疾走し、そしてときには微妙な横ノリを調合するマジックで、ストーンズという「伝統の味」を維持し、屋台骨を支えてきたのだった。
もっと簡単に言うなら、ロックンロールを叩かせたら彼の右に出る者はいない、ということだ。

さようなら、チャーリー・ワッツ。
あなたが叩き出す音楽に、わたしはどれほど救われてきたことか。

心からの感謝とともに、ご冥福をお祈りします。
ありがとうございました。

そして、長いあいだ本当にお疲れさまでした。