【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#401
The White Stripes
“Elephant” (2003)
わたしがホワイト・ストライプスの音楽を初めて聴いたのはTVでだった。グラミー賞だったかMTVアワードだったか、そんな番組だ。
わたしの哀しい性で、先にあの無駄にエロいお姉ちゃん(設定上)のメグのほうに目が行ってしまったが、なんだかやる気のないダルそうな叩き方なのに妙に原始的なパワーを感じるこの不思議なドラムの印象も鮮烈だった。
技術にうるさい人は「単にヘタクソなだけ」と言うらしいけれども、実際メグは22歳でジャックと結婚し、23歳でドラムを始めるまで楽器など触ったこともなかったという。でもわたしは技術的なレベルと音楽の面白さはまったく別問題だと思っているので、どうでもいいのである。むしろ、ドラム歴ゼロ年でホワイト・ストライプスを始めてあの演奏だとすれば、ちょっとした天才なのだろうと思う。わたしはこのお姉ちゃんのドラムがとても好きだ。
弟(設定上)のジャックのギターの腕前のほうは間違いなく、大変なものだ。
彼は古いブルースやカントリーに傾倒しつつ、そのサウンドからは、70年代ハード・ロックやデトロイトの伝統音楽であるガレージ・ロックのギラギラした響きが聴き取れる。
米ミシガン州デトロイトで生まれた彼は、地元デトロイトのミュージシャンたちが音楽的土壌を作ってくれたことに対して崇敬と感謝の念を抱いているという。
特にイギー・ポップのファンで、ストゥージズのアルバム『ファン・ハウス』を「今までに作られた最高のロック・アルバム」と断じて憚らないらしい。彼はきっと、すごくいいヤツにちがいない。
本作は2003年4月にリリースされた、ホワイト・ストライプスの4枚目のアルバムである。全米6位、全英1位とセールス的にも大成功を収め、バンドを世界的スターに押し上げた大ブレイク作だ。
【オリジナルCD収録曲】
1 セヴン・ネイション・アーミー
2 ブラック・マス
3 ゼア・イズ・ノー・ホーム・フォー・ユー・ヒア
4 アイ・ジャスト・ドント・ノウ・ホワット・トゥ・ドゥ・ウィズ・マイセルフ
5 イン・ザ・コールド、コールド・ナイト
6 アイ・ウォント・トゥ・ビー・ザ・ボーイ・トゥ・ウォーム・ユア・マザーズ・ハート
7 ユー・ハヴ・ガット・ハー・イン・ユア・ポケット
8 ボール・アンド・ビスケット
9 ザ・ハーデスト・ボタン・トゥ・ボタン
10 リトル・アコーンズ
11 ヒプノタイズ
12 ジ・エアー・ニア・マイ・フィンガーズ
13 ガール、ユー・ハヴ・ノー・フェイス・イン・メディスン
14 ウェル・イッツ・トゥルー・ザット・ウィ・ラヴ・ワン・アナザー
冒頭の「セヴン・ネイション・アーミー」のあの有名なリフを聴いた瞬間、わたしはジャックがベースを弾いてるのだと思ったものだ。しかし実はベースではなくて、ギターにワーミーペダルとかいう、音程を無段階に変化させるエフェクターを繋いで、1オクターブ下げて弾いているらしい。
ホワイト・ストライプスは、「ライヴでやれないことは録音でもやらない」という徹底した音楽的リアリズムを追求しているため、本作にもギターとドラム、そしてジャックの弾くピアノしか使われていない。尚、ライナーノーツには「このレコードの録音、ミキシング、マスタリングには一切コンピューターは使用されていない」とわざわざ明記しているほどの、反デジタル主義だ。
何よりも感心するのは、たった二人で、たったそれだけの楽器で、かくも多彩で、豊かで、楽しい、シビれるような音楽を作り上げていることだ。
しかも、やっていることは前衛芸術ぐらいバキバキに尖ったことなのに、その楽曲は大衆的な親しみやすさを持っている。それが広範囲な支持を得た理由だろう。
本作はグラミー賞の「最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム賞」を受賞し、NME誌、スピン誌では年間ベスト・アルバムに選ばれた。
↓ 米オルタナ・チャート1位、全英7位のヒットとなった、ホワイト・ストライプスの代表曲「セヴン・ネイション・アーミー」。第46回グラミー賞で、最優秀ロック・ソング賞を受賞した。
↓ ホワイト・ストライプスの楽曲では最も長い、7分を超えるブルース・ロックの大作「ボール・アンド・ビスケット」。何かに取り憑かれたようなジャックの、凄まじいギター・ソロが存分に堪能できる。
(Goro)


