The Hives
“Veni Vidi Vicious” (2000)
やったー、やったー、ロックンロールが帰ってきたぞー!
と、子供みたいに飛び跳ねながら大喜びしたのが2000年である。
ザ・ハイヴスの登場だった。
90年代も終わりに近くなってきた頃、ロックは複雑化やアート化や電子化や重量化やヒップホップ化と、ロックンロールではない方向へと遁走・逸脱して、末期的な様相を呈していた。オルタナティヴ・ロックは熟しきって、完熟を通り越して、爛熟期へと入り、すでに閉塞感すら漂っていたのだ。
しかし2000年代という新しい時代が訪れた途端、スウェーデンというロック・シーンの辺境から突然現れ、ロックンロールを再起動してみせたのがこの、ザ・ハイヴスだったのだ。
暴力的なリズム隊、鋭利なギター・リフ、異様なテンションで煽るヴォーカル、バンドの前のめりの一体感、ギャングのように下品で、切れ味鋭く、挑発的だった。
英・米のねっとりと爛熟したバンドたちが忘れてしまっていた、ロックンロールの生命力と破壊力、その抗い難い魅力をあらためて見せつけるようだ。
ザ・ハイヴスはスウェーデンの人口1万人の町、ファゲルスタで1993年に結成された5人組だ。インディ・レーベルから1997年に1stアルバムをリリースし、2000年4月に2ndアルバムとして本作をリリースした。
バンドのメンバーは本作を「真鍮のナックルが付いたヴェルヴェットの手袋のようで、残忍さと洗練さが同時にある」と表現した。
【オリジナルCD収録曲】
1 ハイヴス-ディクラール・ゲール・ニュークリエール
2 ダイ・オール・ライト!
3 ゲット・トゥゲザー・トゥ・テア・イット・アパート
4 メイン・オフェンダー
5 アウトスマーテッド
6 ヘイト・トゥ・セイ・アイ・トールド・ユー・ソー
7 ハイヴス-イントロデュース・ザ・メトリック・システム・イン・タイム
8 ファインド・アナザー・ガール
9 ステイトコントロール
10 インスペクション・ワイズ 1999
11 ノック・ノック
12 サプライ・アンド・ディマンド
一聴してわたしは1960年代のアメリカのガレージ・バンド、ザ・ソニックスを想起した。あるいは初期のラモーンズ。彼らに共通する、ロックンロールを演奏することへの熱狂的な喜び、魂の解放とでもいうべき姿がザ・ハイヴスにも重なり合ったのだ。
わたしはこういう前のめりでタイトな演奏の、シンプルなロックンロールに昔から目がない。
かと言って決してノスタルジーなどではない。彼らは間違いなく、2000年に相応しい経験値と新鮮さを兼ね備えたロックンロール・バンドだ。
わたしはこの【名盤500】を年代順に書き進めながら、同時にさまざまなアルバムを年代順に聴き直しているわけだけれども、あらためて本作を聴いて、ついに暗く重苦しいトンネルを抜けたような開放感を感じた。眩しいほどの青空が広がり、思いっきり新鮮な空気を吸い込んだ気分だった。
ヴォーカルを担当しているハウリン・ペレ・アームクヴィストは次のように語っている。「The Hivesは、退屈なロック・バンドへの反撃だった」。
ザ・ハイヴスは、理屈より先に身体で感じるような原始的快楽を再び思い出させてくれる直情型のガレージ・ロックで、閉塞感に倦んだロック・シーンに風穴を開けた。
そして本作はこの後到来する、〈00年代ガレージ・ロック・リバイバル〉の火付け役となったのだ。
↓ 1stシングルとなった「ヘイト・トゥ・セイ・アイ・トールド・ユー・ソー」。このMVは、MTVで大量にオンエアされ、ザ・ハイヴスの知名度を世界規模へと押し上げることとなった。
↓ 2ndシングルとしてリリースされ、ギタリストのニコラウス・アーソンがフェイヴァリットに挙げる「メイン・オフェンダー」。
(Goro)
