⭐️⭐️⭐️⭐️
The Stooges
“Fun House” (1970)
「ストゥージズ」とは「バカたち」という意味である。
あえてそんな名前をつけるほどに、自他共に認めるバカだったのだろう。
たしかにその音楽には知性のカケラも感じられない。
まるで『2001年宇宙の旅』の冒頭シーンに出てくる、初めて道具を使うことを覚えて興奮状態の猿人のようである。振り回している骨が楽器に変わっただけだ。
ストゥージズはまったく売れなかった3枚のアルバムを残した。本作は1970年7月にリリースされた2ndアルバムである。ヒット曲「ルイ・ルイ」で有名な、キングスメンのオルガン奏者、ドン・ガルッチのプロデュースだ。聞いたこともない名前だが、しかし本作はストゥージズの魅力を最大限に引き出した名プロデュースだと思う。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ダウン・オン・ザ・ストリート
2 ルース
3 T.V.アイ
4 ダート
SIDE B
1 1970
2 ファン・ハウス
3 L.A.ブルース
オープニングの「ダウン・オン・ザ・ストリート」のイントロから、ゾクゾクするほどカッコいい。1stからずいぶん進化したことも感じる。猿人からネアンデルタール人へと進化した感じだ。
しかし本作はまたしてもあらゆる音楽誌で酷評された。
メロディ・メーカー誌は「この年最悪のアルバム。鈍重で想像力に欠けるガラクタの山」と評した。セールスも最悪で、ついにレコード会社からも契約を解除されてしまう。
たぶん、ストゥージズの音楽とは、大人から見ればただのガラクタの山だが、子供の目から見ればワクワクするような宝の山に見えるようなものなのだと思う。
この数年後、大人たちによってゴミ溜めに打ち捨てられたストゥージズのレコードは、しかし新たな世代の子供たちによって拾い上げられたのである。
ニューヨークやロンドンでパンクロックの礎となり、90年代のグランジやガレージ・ロック、そしてヘヴィ・メタルまで、ストゥージズの遺した音楽は何世代にも渡って大きな影響を及ぼしていく。
ロックが商業主義に飲み込まれて方向性を見失ったとき、いつもその原点として復活するのはストゥージズの単純さと凶暴さだった。
彼らはロックの究極のアイコンとして、永久にリスペクトされる存在であり続けるだろう。
↓ ゾクゾクするイントロで幕をあける「ダウン・オン・ザ・ストリート」。ストゥージズの最高の曲のひとつだ。
↓ イギーの気違いじみた絶叫で始まる「T.V.アイ」も代表曲のひとつだ。
(Goro)