暑い夏こそ激アツロック!〜MC5『キック・アウト・ザ・ジャムズ』(1969)【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#133

Kick Out the Jams -Hq- [Analog]

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【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#133
MC5
“Kick Out The Jams” (1969)

とにかく毎日クソ暑い。

こんなときこそ、ロック史上最も熱いやつを聴いてみよう。

もしも音楽にも温度というものがあれば、最高温サウンドとしてギネスに認定されていたかもしれない、体感温度ナンバーワンのロックバンドだ。

55年前のこの激アツライヴを体感したいなら、思いきってエアコンを停め、部屋の窓を閉め切り、上半身裸になって、本作を大音量で聴いてみることをお薦めする。ただし水分補給だけは忘れずに。

本作はザ・ストゥージズと並ぶ2大デトロイトの環境音楽、MC5のデビュー・アルバムである。

当時のデトロイトは、フォード、GM、クライスラーという米自動車メーカーBIG3の工場が集まった米国一の自動車工業都市だった。MC5やストゥージズの異常な騒々しさは、工場の騒音で耳がバカになっているせいなのではないかと疑われたほどだ。また、当時のデトロイトはこれまた米国随一の犯罪都市でもあったが、それもまあ彼らのいかにも育ちの悪そうな暴力的な音楽を聴けばなんとなく納得できる。

1stアルバムがいきなりライヴ録音というのは、彼らのハイ・ボルテージの演奏をそのまま収録したいと考えたレコード会社のアイデアらしいが、これが見事にハマった。本気度が高すぎる切迫感と、異常な重量感と破壊力、寝転んで聴いていたら思わず跳び起きてしまうほどのインパクトだ。

とにかくアツい。そしてうるさい。演奏もとんでもなく粗い。
しかしそのとんでもない演奏を、ろくなPAもライヴ録音のノウハウもまだ無い1969年に、ここまで分離良くクリアに録音を残せたのは驚くべきことだ。わたしにはそれがまず奇跡的であると思える。録音がリアルなので、余計にものすごい迫力である。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ランブリン・ローズ
2 キック・アウト・ザ・ジャムズ
3 カム・トゥゲザー
4 ロケット・リデューサー No.62

SIDE B

1 ボーダーライン
2 モーター・シティ
3 アイ・ウォント・ユー
4 スターシップ

A2の冒頭で有名な「キック・アウト・ザ・ジャムズ、マザー・ファッカー!」というMCが聴けるが、当時はこれが大問題となり、全米で展開する有名デパートチェーン〈ハドソン〉が販売を拒否し、それをバンドが口汚く罵る広告を大衆紙に出したことで事態がさらに悪化し、MC5をはじめドアーズやラヴなどが所属するエレクトラ・レコードの全タイトルがハドソン全店から撤去される事態へと発展した。事態を収拾するためにエレクトラは、MC5との契約を解除せざるを得なかった。

また、当初はスリーブにも「キック・アウト・ザ・ジャムズ、マザー・ファッカー!」と印刷されていたため、販売した者が逮捕されるという事態にも及んだという。
それらを修正した盤も作られたが、レコード店では売り場に修正盤を、カウンター内に無修正盤を置き、裏ビデオみたいにこっそり売っていたという。

MC5は3年ほどの活動期間で3枚のアルバムを残したが、商業的には成功したとは言えなかった。

しかし70年代の中頃から英米にパンク・ムーヴメントが巻き起こると、そのパンクの源流としてストゥージズとともに再評価され、さらに90年代にもグランジの始祖として再々評価された。わたしはその、再評価と再々評価の中間あたりで出会って最高評価をしていた。

メンバーの中で比較的よく名前が知られているのはバンドサウンドを特徴づけている爆音ギタリストのフレッド・ソニック・スミスだ。
彼は1980年にパティ・スミスと結婚し、息子と娘をもうけたが、1994年に心不全で46歳でこの世を去った。ちなみに、ソニック・ユースのバンド名は、彼の名前からとられている。彼の息子のジャクソンはやはりギタリストになり、ホワイト・ストライプスのドラマー、メグと結婚した。

↓ タイトル曲の「キック・アウト・ザ・ジャムズ」。現在は問題のMCも無修正で収録されている。

Kick Out The Jams (Original Uncensored Version)

↓ フレッド・ソニック・スミスとウェイン・クレイマーのツインギターの壮絶な戦いが聴けるド迫力の「ロケット・リデューサー No.62」。

Rocket Reducer No. 62 (Talk)

(Goro)