激しい情念とエッジの立った攻撃的なブルース・ロック【ストーンズの60年を聴き倒す】#75

ブルー&ロンサム(SHM-CD)

『ブルー&ロンサム』(2016)

“Blue & Lonesome” (2016)

The Rolling Stones

ストーンズ初の、全曲カバーのアルバム。しかもブルースのみだ。

初めて聴いたときは、全体に晦渋で、知らない曲ばかりだし、サウンドも聴きやすくはないなという印象だったのだけれど、あらためて聴くと全然印象が変わった。「あらためて」というのは、ストーンズの60年を聴き倒してきての、あらためてという意味だ。

それに今日は家に誰もいなかったので、大音量で聴いたったのだ。ささくれ立ち、ガツンとくる固さで突き刺さってくるような、攻撃的なサウンドが最高だ。

The Rolling Stones – Blue & Lonesome – In the Studio

※以下、カッコ内は作者ではなく、ストーンズがカバーしたと思われるオリジナル・パフォーマー。

  1. ジャスト・ユア・フール (リトル・ウォルター)
  2. コミット・ア・クライム (ハウリン・ウルフ)
  3. ブルー・アンド・ロンサム (リトル・ウォルター)
  4. オール・オブ・ユア・ラヴ (マジック・サム)
  5. イ・ガッタ・ゴー (リトル・ウォルター)
  6. エヴリバディ・ノウズ・アバウト・マイ・グッド・シング (リトル・ジョニー・テイラー)
  7. ライド・エム・オン・ダウン (エディ・テイラー)
  8. ヘイト・トゥ・シー・ユー・ゴー (リトル・ウォルター)
  9. フー・ドゥー・ブルース (ライトニン・スリム)
  10. リトル・レイン (ジミー・リード)
  11. ジャスト・ライク・アイ・トリート・ユー (ハウリン・ウルフ)
  12. アイ・キャント・クイット・ユー・ベイビー (オーティス・ラッシュ)

リトル・ウォルターが多いな。
しかしそもそもはカバー・アルバムを作るつもりで始めたわけではなく、新作を録音するつもりだったのだと言う。ヴィンテージの機材が揃っているマーク・ノップラー所有のスタジオに入り、音を試すために「ブルー&ロンサム」でもやってみようとロニーが提案したのが始まりだったそうな。

次はミックが「コミット・ア・クライム」をやろうと言い出し、そのまま楽しくなって3日間で12曲を録音したのだという。選曲に偏りがあるのも、その場の思いつきで演奏したからだろう。ミックはリトル・ウォルターが大好きなのだ。それにしてもあらためてこの白人界一のブルース・シンガーの物凄さを見せつけられた思いだ。

なにしろ平均年齢70歳のバンドだ。わたしは勝手に枯れた味わいのブルース・アルバムを想像していたのである。そしたら、まるで真逆だった。年齢を重ねて蓄積した自信が漲るような、堂々たるパワーで圧倒するブルース・ロックだ。「ちょっと試しにやってみた」でこれなのだから恐れ入るとしか言いようがない。そういえばストーンズはブルース・バンドだったなと、今更ながら思い出した。そう、これが本来のストーンズなのだった。忘れてたけど。

ちなみに6と12には、たまたま隣のスタジオに来ていたというエリック・クラプトンを引っ張り込んで参加させている。

アルバムは全英1位、全米4位、そして日本でも3位と、商業的にも大成功だった。みんな待ってたんだな、ストーンズの原点回帰を。

でも、そもそもスタジオに入ったのは新曲を録音するためだったはずだけど、そっちはどうなったのかな。

The Rolling Stones – Hate To See You Go

(Goro)