Here Comes Your Man (1989)
ピクシーズが1989年に発表した、名盤2nd『ドリトル』からのシングル。
この年の英国の音楽誌NMEの年間アルバムの読者投票で1位となったのがストーン・ローゼスの『石と薔薇』、そして2位が『ドリトル』だったのは象徴的だ。
まさにこの英米のインディーズ・シーンを代表する2組の登場によって、良くも悪くもMTVの影響下にあった商業主義的な80年代ロックは終わりを告げ、再び本来のロックのゴツゴツした感触や尖った先端を取り戻し、大人が眉を顰めるような騒々しい90年代ロックが始まったのだった。
1986年に大学を中退したブラック・フランシス (vo,g)は、同級生のジョーイ・サンティアゴ (g)とバンドを結成することを考え、ドラマーとベーシストを新聞広告で募集した。
そのときの募集記事が「ハスカー・ドゥとピーター・ポール&マリーが好きなメンバー求む」だったそうだ。
ハードコア・パンクのハスカー・ドゥと60年代のフォーク・トリオという、一見ふざけているとも取られかねない組み合わせは、しかし後に創造することになる彼らの画期的な音楽をうまく表現していて感心するほどだ。グループを結成する前から、しっかりとした音楽のヴィジョンがあったということなのだろう。そしてこの記事に応募し、メンバーとなったのがキム・ディール (b)とデヴィッド・ラヴァリング (d)だった。
この「ヒア・カムズ・ユア・マン」は、そのピーター・ポール&マリーが顔を覗かせたような、ユーモラスな脱力系ポップスである。わたしはこの曲が大好きだ。
このシングルは米オルタナティヴ・チャートで3位と、彼らにとって最高位を記録した。フザけたMVも、いかにも彼ららしい。
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(Goro)