Bob Dylan “Springtime in New York:The Bootleg Series, Vol. 16 1980-1985”
現時点でのディランの最新アルバムはこのブートレッグ・シリーズ第16集だ。
1980年から85年にリリースされた『ショット・オブ・ラヴ』『インフィデル』『エンパイア・バーレスク』のアウトテイクを集めた、通常版2枚組、デラックス版5枚組のセットだ。
『ショット・オブ・ラヴ』はわたしが16歳のときに初めて聴いたディランのレコードで、そのアルバムのアウトテイクである未収録曲「アンジェリーナ」から通常版は幕を開ける。以前『ブートレッグ・シリーズ第1~3集』にデモ・バージョンたみいなのが入ってた曲だけれど、バンドも付いたその完成版である。なんでこれが収録されなかったのか不思議なほど良い曲だ。
全体的には、リハ・テイク、テイク違い、未完成曲みたいなものもありのアウトテイク集だが、中でも聴き物は『インフィデル』のアウトテイク、「ブラインド・ウィリー・マクテル」だ。
1920~30年代に活躍した盲目のブルースマンの名を冠したこの曲は「セント・ジェイムズ・インファーマリー」のメロディーを借りたものらしいが(だから収録されなかったのかもしれないが)、なかなかの名曲に仕上がっている。もし『インフィデル』に収録されていたら、わたしはこれがいちばん好きになっていただろう。ギターはミック・テイラー、リズム隊はスライ&ロビーだ。
80年代前半はディランに限らず、ベテラン大物アーティストたちが迷走したり、新たなサウンドへのチャレンジに苦闘した頃だ。
でもディランのこの時代の苦闘は創造的だったし、バンドも良いし、音楽的に充実していたことがこのアルバムを聴くとあらためてわかる。
さて、これで【ディランのアルバム全部聴いてみた】のシリーズはいったんここで休止します。また新しいアルバムが出たら、その都度書くつもりです。
それにしても、ディランの名盤や代表作ならともかく、100曲を超えるアウトテイク集なんかを聴き続けたりするのはなかなかハードだったけれども、でも自分にとってはすごくいい経験になりました。そして、以前よりもディランが千倍ぐらい好きになりました。これで終わってしまうのがなんとも寂しいぐらいです。ディラン依存症になってしまったのかもしれません。まあ今後も死ぬまで聴き続けることでしょう。
最後までお付き合いくださったみなさん、ありがとうございました。
↓ 『インフィデル』のアウトテイク、「ブラインド・ウィリー・マクテル」。